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3. 肩関節障害:水泳肩5)

 

水泳における障害の中で最も頻度が高く,一流選手の約70%が一度は経験しているといわれるほど頻度の高い障害である6)7)。水泳肩は,クロール,バタフライ,背泳ぎの選手に多く見られるが,特にバタフライではリカバリー動作を左右同時に行うために肩への負担が大きくなり障害を生じやすい。ここでは水泳肩の成因、診断、対処法につきのべる。

成因(図16):バタフライにおける推進力の多くは,上肢のストロークで得ている。推進力を効率よく得るためには,掌を進行方向に対して適度な角度に保ちながらS字状に動かし,これにより生じる揚力を用いることが重要である8)。また,肘を常に高い位置に保ちながら(ハイエルボー)ストロークを行うことも,重要である。

入水期には肩関節を内旋させ母指から入水し,肘を充分に伸ばしながら手は前下方へ進み水をキャッチする,その後肘の位置を保ったまま,肘を屈曲させ肩の内転を行いながら水をなでるように掌の角度を変えながら体幹までかきこむ。次に肩を内旋させながら手を外上方に動かし離水期へと移行する。リカバリー初期には肩関節内旋位で肘から離水し,肘頭を上に向け・ハイエルボーを保ちな

 

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がら肩を外転させる。リカバリー前期に於いては肩関節は内旋位にあり,後期では外旋位となる。クロール,背泳においては体幹は左右のローリングを伴い滑らかなストロークを助ける。

この様な泳動作に伴って,繰り返し行われる肩関節の内外転・内外旋運動により,烏口肩峰弓に対して腱板と上腕二頭筋長頭腱がこすれあう(インピンジメント)ことで炎症を生じ,疼痛を生じる。キーホール型プル,ハイエルボー等の理想的とされているストロークを行うためには,肩関節の柔軟性が必要であり,柔軟性に乏しい選手がこの様な泳ぎを行おうとするとインピンジメントを起こす機会が増す。一方,経験年数の長い選手には,肩関節が柔らかく,むしろ関節の不安定性(ゆるみ)があることが多い。肩がゆるく不安定な場合,ストロークの際に肩関節にぶれが生じ,このためインピンジメントを生じやすくなり炎症を生じやすい9)。肩関節の運動中の安定性を保つためには,動的安定化機能を持つ肩外旋筋群が適切に機能していることが必要である。つまり,一流選手は肩の柔軟性に加えて,運動時に安定した関節を持つことが重要であることを示唆する。

診断:水泳の練習中,練習後の肩前方の痛みがある場合は水泳肩を疑う。典型的な水泳肩の場合には烏口肩峰靭帯付近に疼痛を有し,同部に圧痛を認める。また,簡単な検査法として烏口肩峰靭帯付近に母指で軽く圧迫を加えながら、選手の脇を軽く開かせ,選手の手首を持ち肩を回旋させたときに普段の痛みと同様の疼痛が誘発されるかどうかをみる(図17)。この検査法により容易に水泳肩と診断できる。

レントゲン所見にて異常所見を認めることはまれである。

治療、予防(表3):水泳肩は症状の程度によって以下の4段階に区分され9),治療法はこれらの症状の程度によって異なってくる。

クラス1,水泳活動後のみに疼痛を生じるもの,

クラス2,水泳活動中か後に疼痛を生じるが水泳活動には支障を来さないもの,

 

 

 

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