保持者,そしてバルセロナとアトランタの2回のオリンピック出場経験を持つ衣笠選手のバタフライ泳法である。エントリーからリカバリーまでの1ストロークを,16シーンで示す。
まず,?@〜?Eまでがアウト・スウィープ局面となる。ここでは,手の平が迎え角を保ちながら,外方向にスウィープされていることがわかる。この動作からも,前方への推進力を発揮するというよりは,しっかりと水をとらえることが目的であるといえる。特に,?Eや?Fの動作から,手の平が十分に水をとらえていること(キャッチしていること)が理解できる。
イン・スウィープ局面は,?F〜?Iとなり,ここでは肘関節が高い位置で保たれながら,内側へのかき込み動作が行われている。よくいわれるハイエルボーポジションである。また。アウト・スウィープ局面と同様,手の平の迎え角にも,注目したい。
アップ・スウィープ局面は,?I〜?Lとなり,主に肘関節の伸展動作が中心となる。離水は小指側から行われる(?L)。リカバリー局面は,?L以降となる。
プル動作を理解するためには,手の軌跡と,それに対する手の平の迎え角が重要となる。
2. キック動作について
1) ドルフィンキック
バタフライのキックは,“ドルフィンキック”と呼ばれ,その名前のとおりイルカ(ドルフィン)の泳ぎ方からつけられてものである。
体長2mのマイルカの遊泳速度は,時速36kmとされている2)。100mを50秒で泳いだとしても時速7.2kmなので,5倍のスピードにもなる。ちなみに,体長27mのシロナガスクジラもマイルカと同じで時速36km,マグロにいたっては時速60kmにも達するとの報告がある(身の危険を感じた時は時速160kmものスピードを出すと言われている2)。