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なぜならば,人が落下するためにはまず上昇しなければならないという簡単な事実を見落としているからである5)。すなわち,上昇に際し,速度の低下は免れないということである。

このように考えていけば,可能性としてはいろいろといわれてきたが,現段階ではバタフライの記録が白由形の記録を上回ることは,泳法が画期的に変わらない限り困難ではなかろうか。

 

5. 技術の変遷

 

これまで見てきた記録の改善は,体格の変化や体力の増大,効果的なトレーニング法の開発などによると同時に,技術の改善,または他に類をみないような優れた技術の導入によって達成されたものも見逃せない。ここでは,これまで歴史上に見られた大きな技術の変遷に加え,有名選手に見られた特異的な技術について触れることにする。

 

5-a. かえる足からドルフィンキックへ

 

バタフライの記録の改善に最も大きな影響を与え,かつバタフライの技術の変遷史上最も顕者な変化といえるのは,かえる足からドルフィンキックに,キックの技術(様式)が変わったことである(図11)。これは,平泳ぎからバタフライが独立する際に,“かえる足のみ”に規定されていたキック動作が,”左右の足が同時に相似形に動くならば,かえる足でも自由形の足でも良い”というようにルールが変更されたことによる。ドルフィンキックがもたらした効果としては,大きな推進力を持続的に産生することができるようになったということ,かえる足の引きつけ時に生じていた大きな抵抗要因を減少させることに成功した点である。

 

5-b. 1ストローク2キックのコンビネーションの確立

 

前述したように,まだバタフライが平泳ぎから独立する20年程前にアメリカのジーグ選手がドルフィンキックとバタフライのストロークとを組み合わせ,腕を1回かく間に2回キックを打つ場合に技も調和がいいことを発見している。しかしながら,当時はドルフィンキックを平泳ぎ種目の中で用いることができなかったために,この試みはこの場限りて跡絶え,発展はしていない。

現代バタフライで用いられているようになった1ストローク2キックのコンビネーションは,

 

 

 

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