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また,日本記録は男子が100m,200mともに山本貴司選手の持つ53秒85,1分58秒01,女子は100mが青山綾里選手の58秒83,200mが鹿島瞳選手の持つ2分8秒69である。女子の記録は,世界でもトップクラスに位置する記録である(1997年12月現在)。これを初めて公認されたときの記録と比較してみると,43年間のうちに,世界記録では男子において100mも200mも約23%,女子においては30−32%,一方日本記録は男子において33−34%,女子において100mが47%,200mが31%もの向上が認められている。

 

4-f.バタフライはクロールより速くなるか?

 

スピッツ選手の出現によって,バタフライのスピード化に拍車がかけられ,当時,「バタフライは将来自由形の記録を上回るであろう」とさえ,いわれるほどであった6)。この背景には,単にスピッツ選手が速かったというだけでなく,いくつかの根拠がある。一つには,レベルの高い選手になると,ドルフィンキックによって,約2.0m・51程の高い速度を,しかも平泳ぎのような加減速なく産生し続けられるという点である。また,バタフライの落下時の瞬間最大速度が全泳法中最大であることや5),他の泳法と比べて,記録の伸び率が高いということなども,これを支持する理由に上げられる。では,実際にバタフライが自由形の記録を追い抜くことができるのであろうか?

図10は,男女100mのバタフライと自由形の世を界記録の変遷を表したものである。男子の記録を見てみると,確かにスピッツ選手が世界記録を樹立していた1970年代前半までの記録の伸び率は,「自由形のそれより約2倍もの速さで記録を短縮してきている。したがって,その当時に,バタフライが自由形を越えるのではといわれたことも,あながち信憑性のなかったこととは言えない。しかしながら,1970年代後半をからの記録の伸び率は,それまでと比較してはるかに緩やかとなり,自由形の伸び率とほとんど変わらず,横ばい状態になっている。女子を見てみて

も男子と同様,1960年

 

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代までと比較して,1970年代以降では記録の伸び率が低下している。しかも,1981年以降記録の更新はない。一方,自由形は1960年代中盤から1970年代初頭まで記録の横ばいが見られたが,それから1970年代終盤まではまたそれ以前と同様の記録の伸びを示している。しかしながら,バタフライの記録が更新されなくなった後以降は,自由形の記録もわずかずつしか更新されておらず,男子と同様,1980年以降は両者の記録は縮まっていないと見て取れる。

また,“バタフライの落下時の速度が全泳法中最大であるから,これを持続すれば自由形より速く泳げるのでは”という意見についても,これは実際には極めて実行困難と思われる。

 

 

 

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