競泳競技は,自由形,背泳ぎ,平泳ぎ,およびバタフライという4つの種目とそれの組み合わせからなる個人メドレーで構成されている。太古の資料からその発生と歴史の深さを知ることのできる自由形,背泳ぎ,および平泳ぎと比べて,本項のテーマであるバタフライは,今世紀中頃に派生した最も歴史の浅い泳法である。一方,歴史は浅いものの,平泳ぎとならび,日本人選手が男女ともに世界記録を樹立した種目でもある。本項では,バタフライの発生からそれが新種目として確立されるまでの過程,および記録,技術,ルールなどの変遷を交えながら,世界と日本におけるバタフライの歴史を顧みることにする。
2.世界におけるバタフライの歴史
2-a.バタフライの誕生
表1に,世界と日本におけるバタフライの歴史をまとめた。
バタフライは,元来平泳ぎから派生した泳ぎであり,平泳ぎのスピード化を目的として腕のリカバリーを改良したことから生まれたものである21)24)。