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「左座右立」「座礼」「立礼」「黙想」と、精神の礼を学び、足さばきに素ぶりを毎回のけい古でくり返し、無利無駄のない基本の動きの大切さを学んで、僕は「千里の道も一歩から」とよく思います。まだ、竹刀を持ったばかりの頃、ふりかぶるのが精一杯で、真っすぐな素ぶりなど至難の技で、フラフラ、バタバタと不恰好な姿がなつかしく思います。初めて防具を付け、面の重さと、視界のせまさに、向かい合うこわさにおどろきました。それでも、いつかテレビで見た剣士を心のどこかで夢みています。

剣道の言葉の中に、好きな言葉があります。「勝ちに不思議の勝ち有り、負けに不思議の負けなし」という言葉です。勝ちにうぬぼれず、負けに学ぶ。僕のモットーです。だれにも頼る事のできない二分間。二本先取の真剣勝負。勝っても負けても、一人で立ち向かう自分がとても好きになっていました。そして、負けてしまった相手にも、終われば、友情すら感じています。この五年余りで、数えきれない友達に出会いました。山口県で行われた「全国スポーツ少年団剣道交流大会」、日本武道館で行われた「全国少年剣道錬成大会」「全日本選抜少年剣道個人錬成大会」に出場して、剣道の世界の広さを知りました。僕は、この仲間の一人だと思うと、うれしく、自分がとても大きくなった様な気がし、自信を持つ事ができました。五年前、エンデバーに乗り、宇宙から地球を見た毛利衛さんは、講演で、「宇宙とはすでに、目の前から宇宙なのです。」と言われました。未来は、一回、一回のけい古の中の剣先に続いていると、僕は考えます。

二十一世紀に生きる僕たちは、自分の事を考えるように、周りを、地球を、宇宙を考える事のできる、大人にならなければなりません。未来の子供達に、今以上の宇宙を残さなければいけないからです。僕は、宇宙を旅する事があっても、竹刀は忘れずに持って行こうと思っています。迷った時、つらく苦しい時、竹刀をにぎり、僕を支えてくれた多くの人を思い出し、勇気を持って立ち向かって行きたいと思います。

 

 

 

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