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フィールドワークフェローシップに参加して

 

廣瀬 葉子(東海大学5年)

国際保健学という分野は重要性が専門家の間でも認識されながらも、日本ではまだ確立されていないのが現状である。私はフェローシップのプログラムを通して、国際保健学について実践的に初めて勉強する機会を得た。日本の医学部教育ではそこまで包括する教育方針がないこともあるが、学部の時期より国際保健学について問題意識を感じる機会は少ない。そのような現状の中、私がこのプログラムに参加できたことはとても幸運であったと言える。

私がフィリピンの数々のプログラムをみて初めて実感したことと言えば、日本あるいは日本人独自の姿勢、考え方がほとんど見えてこない、ということである。日本が保健分野において、国際協力に貢献していないわけでは決してない。JICAの結核プログラムやWH0のポリオ撲滅計画には日本が経済的な援助を中心として大きな貢献を成し遂げてきている。 しかしながら、日本人の影はうすいように思えてならなかった。これはどうしてであろうか。私は大きく3つの理由によると考えている。その第一の理由とは、 日本人がそのプログラムのリーダーシップをとるのに個人レベルではなく、団体もしくは企業のレベルで行っていることによる、と私は考える。一個人がその国に惚れ込み、問題意識を惹起しているのではなく、たとえばJICA、WHOといった専門家のグループが常に動き、あまりリーダーと呼ベる顔が見えない状況であったと推測する。3年、5年といったサイクルで現地の人材が変わり、その地域に密着する専門家がいないのでは、日本からリーダー的人材が生まれなかったのは不思議なことではないと言える。そして第2の理由としては、 日本人は国際機関で働くことに不慣れである、ということが挙げられる。日本人は最近国際化が進んだというものの、文化背景の異なる人たちと常に仕事をしている人は非常に少ない。そのような人たちと協力体制を維持していくのは、容易なことではない。国際機関での経験が十分ある人は日本ではほんの一握りの人たちでしかないのが現状である。これでは、リーダーシップを発揮するまでには時間がかかるのも無理はないであろう。そして第二の理由は、言語の壁である。日本語以外でdiscussionしたり、説得・交渉を行うことは日本人にとって勇気のいることである。現在の日本の英語教育、外国語教育ではその力を育てることは非常に難しく無理もないが、現地の言葉を駆使することができない限り、相互理解は決して深まらない。会話ができるレベルではなく、交渉できるレベルにまで外国語を堪能する必要性を私は感じた。

以上、私が2週間を通して考えた現在の日本の国際保健協力に対する問題点であるが、私はこれらを決して悲観的には思っていない。私が感じたように、同じ様な機会を得た国際保健医療にこれから携わるであろう人たちが、それぞれの問題意識を提示し、行動力につなげていくと信じているからである。一人ひとりの努力により必ずこれらの問題点は改善されていく。日本の国際保健学においてはこれからなのである。21世紀には日本がより協力体制に幅を広げ、内容を充実させ、名実ともに世界に通じるようになっていけるように、私も今後努力を続けたいと思っている。

 

 

 

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