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○感想

東南アジアの子どもたちをポリオの苦しみから救いたい。そんな思いで撲滅計画をつくった。天然痘の苦しみから救いたいという思いで撲滅した。それで本当に良かったのか。予防注射を一日どれだけ多くうてるか、ギネスできそう?ここまでくると意図が見えなくなる。

ポリオにかかったこの苦しみは、形容しがたいものであろう。しかし、数字を下げるためには結核のように出生率を下げさせ、感染源対策に力を注ぐものもある。確かに、そうすれば死亡率は下がる。はたして、患者たちは、出生率を下げさせてまで死亡率を下げてほしいと思うか。この考えでいったとしたら、ポリオの経口ワクチンは、説明もなく 1日何人に飲ませたと競い合いながらワクチン投与が行われると思うと何のために行っているか疑問になることが多い。公衆衛生が医学ではないといわれている根底が明るみにでてしまうのではないか。私は公衆衛生は臨床医学であると思っているのでこういう対応はさけてほしいと願うばかりである。

また、こういうことを考え始めると、今健康なヒトに予防医学は必要なのか疑問に思うことがある。ポリオ以外にもいくらでも死因があるわけだから、ワクチンを強要する必要があるのか。十分な説明なく健康なひとにワクチン投与をするのはかえって事故を招くであろう。事故となった場合誰が補償するのか。それをWHOで話したところでなにになるかといえば、なにもならない。フェローとディスカッションしてもこの話で終了してしまうのも情けない話だと思う。

(管野 渉平)

 

WHOで働く日本人は日本の経済的役割を考えるとそれに見合った数ではない。厚生省から出向という形をとり、2年あるいは3年といった期間働いている人はいたが、長期にわたって「根付いている」ような方は見受けられなかった。とても残念である。西太平洋地域のトップであるDr.Hanは3カ国語を自由に操る方でいらっしゃるが、日本人でこのような人はめったにいない。日本人の語学のハンディは大きいのだろうか。 日本人がまだ真の国際社会の一員となり得ていないところを垣間見るようであった。国際機関で働くということは自国で言葉も問題ない環境から比すると何倍もの努力を要する。自国を代表するとも言えるような立場で、いかに相手を説得し、自論を展開させていくかという実力が必要であるからだ。 しかしあえてこれから我々学生一同は携わっていこうとする分野でもある。非常にmotivationが湧いたと同時に、今の我々に足りないものは何であるかを明確にすることができた一日であったとも言えるであろう。

日頃、医学生として病院に一日の大半を過ごす毎日では社会との接点を見失いがちである。しかし、国際保健分野は社会との接点なしには存在し得ない分野である。社会とこれほど密にマクロ、ミクロの双方の視点より相関関係をなしている医療の分野があることをこの日初めて知ったように思える。

(廣瀬 葉子)

 

 

 

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