【考察】
1.死因統計の曖昧さと定義の問題
日本の場合、死亡診断を直接下すのは、医師・歯科医師である。また、診断を下す場合、下すべき診断名を、国際疾病分類にあったものをしるす。これは、日本や世界の統計を一本化していくための配慮である。
しかし、今回、この施設で提示されたのは、国際疾病分類とは、少し異なったものであった。この原因は一つに死因を医師が決定していないという点、もう一つは、死亡者全員をリサーチすることが不可能であるため、統計をとって考察するということが重要視されていないという点などがあげられる。提示されたものを考察すれば、貧富の差が激しいという発展途上国の現状を考えると理解できるように、富むものは、慢性疾患での死亡が多く、貧しいものは、感染症・事故・それに伴うショックなどで死亡する例が多いという考祭ができあがる。しかし、後者の配分と前者の配分が半分半分というのは人口動態から考察しても理解しがたい。従って、確実に後者の配分の方が多いのであろう。それを基にすれば、死亡率推移と感染症動向をみて、対処できるものから対処していくのは公衆衛生学的に重要なことであり、ターゲットは、結核であると絞られたわけであろう。非常に的を得ている統計利用法の一つであろう。世界中どこを探しても確実な統計は存在しない。逆にそれをダイナミックにつかんだ上で、その動向を的確に把握し、衛生活動に応用する方法は、日本の慢性疾患対策でも生かされなければならない課題であろう。そうすると、日本の公衆衛生は、慢性疾患における統計を考祭し、国全体の死亡率・有病率を動かすほどの解析・プランを完成させていないことになる。THPやアクティブ80ヘルスプランなどは、ただ存在するだけで、実際の企業や地域医療で生きているとは思えない理由も、恐らくここから解析できるであろう。
2.フィリピンの医療従事者の現状
日本では、看護婦不足・医者の過剰・歯科医師の過剰などが問題となっているが、フィリピンでも状況は同じである。医師も少ないように見えるが実際は、日本よりも大病院嗜好が強いということで末端の地域医療レベルの低迷が問題となっている。これは、医師自体の雇用条件の問題であろうと考えられる。また、看護婦についても同様であろう。 しかし、フィリピンでは、日本と違うのは、保健婦、いわゆるmid wifeなどに十分彼らの社会的責任認識をさせ、雇用しているという点である。フィリピンの地域医療の担い手であるといっても過言ではない。医療
従事者の産業医学的見地で言えば、正しい現状である。ここで、医療従事者の雇用体制の問題や労働環境の問題をリサーチして、地域医療ヘアプローチすることは可能なのではないかと考祭する。職場のQOLは、医者・看護婦にとっても基本であろうと思われる。日本の歴史の中でもこのような時期は通っている。職場巡視等の中でこれらの細かいメッセージを雇用体制・雇用分布等から把握することの重要性を大きくつかめた気がする。