3. 結論・展望
日本住血吸虫症罹患率の異なるミンドロ島の4村落において、超音波検査と血清学的検査でB型及びC型肝炎抗体陽性率と、一般肝機能検査およびELISAによる日本住血吸虫抗体値を検査した。その結果、B型肝炎に関しては約40%の抗体陽性率を示したがGOT、GPT値からは現在の活動性の肝炎は少ないと推測された。一方、C型肝炎の抗体陽性率は1.3%であった。一般肝機能検査ではアルカリフォスファターゼ値において超音波所見における変化が進むほど異常値の出現率は低下する傾向がみられた他は一定の傾向は観察されなかった。今回の結果から、本症罹患率が異なる村落間において超音波所見の程度と年齢との間には程度の差はあれ、加齢により肝異常所見が強まる傾向がみられた。しかし若年齢層における肝臓の異常所見の発現は高度罹患率村落においてより多く出現する傾向がみられた。このことは同じ抗体陽性者を対象にした今回の調査において、超音波検査が本症流行地住民の感染の程度を評価する可能性を示唆するものと考えられ、本症の morbidity study への応用が期待される。