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私は、いつも申し上げるんですが、去年、一昨年、ジュネーブでCOP3を日本に招致するということを決めた時に、その瞬間はとってもうれしい、よかったという気持ちと、もう一つ、ちょっと待てよと。前の年で既にC02の排出が8%オーバーしてたのです。8%を1年の間に減らせというのは、これは至難の業なんです。そんなものできっこないんです。だけれども、手を挙げて当選してしまった以上は引き下がるわけにはいきませんから、だとすれば、これはその8%をどこまで減らすことができるかは別として、日本人はこれだけの努力をいたしましたと、結果としてこうなりましたということを世界の人たちに報告をする場所として、新しい出発点として位置づける以外にはないなと自分に言い聞かせました。これは自分に言い聞かせたのであります。

そして閣議で、実は1年間で1990年レベルに、つまりベルリン・マンデードまでに到達するのはそう簡単じゃない。だから、政府を挙げて、国を挙げて、みんなで温暖化ガスを抑え込むために頑張ろうじゃないですかと。そして橋本さん、あなたはリーダーシップを発揮しなさいと。ここで世界の人々から、日本は単に座敷を貸しただけではなくて、その座敷で合意が見られたことまで含めた主催国としての責任というものを果たすことができれば、それは世界に貢献する、環境で貢献をする日本ということになるように思うと。ぜひひとつそんなことでご協力をいただきたいということを申し上げたことを、今でも覚えがございます。それから3カ月後に、私は辞めざるをえなかったものですから、その努力を閣内ですることはできませんでした。

しかし、思えば、その時から1年あったんですが、率直に言って、あまりこういうところで申し上げてはいけないんですけれども、しかし、あえて言います。1年間、C02を減らすための具体的な努力というものはそれなりに行われたかもしらんが、少なくともCOP3を日本で開く、それにふさわしい努力が行われたかと言えば、私は無為無策であったと言わざるをえません。そしてどちらかと言えば、通産省はゼロだと。環境庁は精一杯国際的な動向があるから頑張らなければいけないといってやるけれども、どうも通産省のほうが発言力が強くて、環境庁のほうがどっちかと言うと弱い。日本はまとめ上げていく過程では、通産のほうの案がどうもまかり通っているという姿が出てしまうんです。これじゃ、通産と環境の争いのために1年間費やしたというふうに言われても仕方がないぐらい、具体的な政治の姿として十分でなかったように思います。その点は、私自身もその責任を免れることはできないように思う。その意味で、これからもそのやり取りを含めて取り組んでいかなければけないと思う。

ただ、日本は環境基本法という、いわば体制があります。環境を第一義的に考えようじゃないかという、いわば内外に対する宣言であります。それをどうやって生かしていくのかということが必要です。それともう一つ、できればいわばこの宣言の中に、基本条約の中に、環境庁長官の本当の意味の調整権といいましょうか、調整権は確かに制度上はあるんですが、リーダーシップを発揮できるような、そういうものを保障していくということが必要だ。そうでないと、A省があって、B省があって、省益をもってやり取りしている。環境庁は後から来てあまり口出しをしても、それに対して行司の役割もできない。そんな形じゃ、環境庁って非常に弱い存在だと思うんです。だから、そういう場合に、環境庁がきちんと審判を下すことができるような調整権というものを持つ

 

 

 

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