それは非常にいいことだと思います。
実は、縦割りの弊害というのは、今申し上げたような弊害のほかにもう一つあるんです。それはみんな同じことをやるということなんですね。建設という立場、農林水産振興という立場、環境という立場、産業振興、いろんな立場があります。例えば環境にしろ、もちろん環境はいろんなところでやってもらってもいいんですけれども、例えばリゾート法の20年程まえ、列島改造論から新全総のころ、大規模開発プロジェクトが次々と構想され、その中に観光開発プロジェクトというのがありました。ああいう時でも、実は同じことをみんなやって、あちこちで、開発を進めたのです。そこにはいろいろな無駄も生じてるわけです。そのあたり、両方面を直すためには、やっぱり役所の数を減らし、統合してしまってダブリを防ぐというのも、実はほんとに必要な行政改革なんで、いろんな批判もありますけれども、ともかく数を減らすというのは大変にいいことであるのは間違いないと思います。
それは余談でありますけれども、環境ということを考え、特に自然ということから、先ほど申し上げたように生物の多様性というようなことをテーマに、今後、行政は進んでいくと思います。そこで、先ほど申し上げたような、その中でイギリスのナショナル・トラスト制度というものをモデルにし、ほんとに動かせるかというのは、実はなかなか難しいのです。イギリスにいらっしゃった方も多いと思いますが、実は日本で自然が残ってる所は、あんまりないと申し上げましたけれども、イギリスへ行ったらほとんどないんですね、実は。勿論大変緑がきれいな国です。どこへ行っても緑の牧草が広がってて、整然としてて、ヘッジという垣根、季節それぞれ花が咲いて、いろんなタイプの羊や牛がいて、実に美しいわけですけれども、ほんとの意味の自然というのがそんなにある国ではありません。そういう中でこういう制度が生じて、発生して大きくなってるというのは、ますます驚異なわけです。ですから、ナショナル・トラストで守ってるものっていうのは、日本で言うような厳密な意味でのすごい貴重な自然とかいうものだけでは決してないわけですね。そこの選択のセンスというのは、やはりアメニティーというか、そういうことが根底にあるのは間違いありません。そこを見つめると、これは都市でも住宅地域でも里山でも、もっと山岳地域でも同じですけれども、日本の場合に、あれは守るべきというもの、それからもうこれはいいというもの、そういうところの仕切りをつくりすぎてるのではないかなと思います。行政は仕切りをつくるのが仕事だといったこととはちょっと矛盾すると思いますが、だからこそ、実は行政に頼れない分野というのが非常に幅が広くあるのではないかなというのが今の時代だと思います。
ですから、多様性の保全、あるいは自然環境の保全というようなことを進める時に、守るべきもの、いいもの、貴重なもの、絶滅の恐れのあるものとかこういうものは実はもう手立てはあるわけですから、そこからどうやって幅広く広げていくか。それともう一つは、いかなる程度の開発をする場合にも、居心地の良さとか、その場所にふさわしい植物、動物というのがそのまま生かし続けられるというようなことを、もう昔から言ってることなんですけれども、それをもう1回徹底させていくというのが、まさにこれからのほんとの環境づくりのテーマだと思います。
そういう意味で、最後のほうに書いてありますけれども、あんまり保護と開発とか