いうふうにしたために地域指定がもう進まなくなっている。いずれにしても土地という問題、これは開発の場合もそうですが、保護の場合は特に行政目的を達成する、あるいは土地の管理目的を変えるというようなことをする場合に、日本の場合、まずそこがどうしても引っかかってくるのです。
もちろんこのことは保護の場合だけじゃなくて、先ほど申し上げた公共事業であれ、都市の再開発であれ、何でも最初は用地交渉なわけです。用地交渉と海の漁業権という、この二つを突破しないと何もできないというのが事実ですので、そういうところを、今後いろんな公共的な目的とどういうふうに調整していくかというところあたりが、例えば行政改革であるとか、そういう社会改革の一つの目的に入ってくる必要があるんではないかなという点も指摘できると思います。
そういうふうに保護地域を指定する自然保護という行政がずっと進んできておりますが、実はほぼ指定はし終わってるようなところもありまして、最近、行政としての目を転じつつあるのは、生物の保護、それを種というレベルで保護する、保護地域というのが縦の保護の行政だとすると、横糸として生物の種を中心とする保護行政というのを付加していって、もう少し網目が濃くならないかというふうに展開をしてきてるわけです。
今、種の保存法というようなのがあって、その前提として、新聞等でお耳に入ってるかもしれませんが、レッドデータブックとぃうのを出しております。これは絶滅の恐れのある種を発表しておるわけで、それを種の保存法という法律で担保するというようなことで、実はこの法律、まだ6年ぐらいですけれども、こういう行政というのは気長にやらないと駄目なものですから、成果が目に見えるようになるには、差本的には私なんかもやっぱり20年はかかるというようなふうには思っております。それでも現在でも随分と効果が出てきまして、ちょっと効果が出すぎちゃったなと思っておるのが、例えば猛禽類の保護であります。いろんな開発の問題の調整があちこちで起きております。イヌワシ、クマタカ、オオタ力とか、こういうのがあっちのダム、こっちの道路とかで問題になってきておりまして、ある意味では、そういう生物を大事にするということで、我々人間も生物ですので、共存ということがどうやって進められるかという一つのきっかけになってるんではないかと思います。
世界的にもそうして、例えばワシントン条約とか、いろんなそういう生物を保護するための条約というのもあります。昨年12月に京都で温暖化防止の京都会議というのがありましたが、一方で生物多様性条約というのがやっぱり92年のリオの会議でできておりまして、日本もこれには入っております。生物多様性というのは非常にいろんな意味があるようでございまして、生物学的な意味で厳密に言うと難しいのですが、慶応の岸先生は、「生き物の賑わい」というふうな表現をされてます。人間を含めていろんな生き物がいろんなところで生き続けていること。そういう自然というのは、結局、先ほどの高橋先生のお話の水もきれいですし、緑もきれいですし、歩いても住んでも居心地がいい。身近な自然の世界ではそういうことが言えるんだと思いますし、原生的な自然であれば、まさに生態系のクライマックスというのを目指して、そういった自然を維持していくというようなことが世界的なテーマになってきております。そういうことをどう