及ばずいろんなことが起きたというようなのも、最近は少なくなりましたけれども、かなりあるわけです。実はこれは先ほどのような制度で土地自身を持っておりませんので、土地を持ってないということは、ある程度の地元としての必要なこと、例えば林業であるとか、例えばいろんな観光的な開発であるとか、そういうものについてもある程度許容しながらいかないと指定すらできないというのが、実態でもあるわけです。
それともう一つ、例えば人の立ち入りを禁止してまで自然を保護するという、生態系をありのままに守るとか種を守るとかというのは、土地自体も所有しないと最終的な徹底はないわけですけれども、そこがなかなか今の制度ではできないというデメリットがあるわけです。
あの滑降コースの話でも、随分書かれましたのは、つい隣のほうは上のほうまでリフトが上がってる。おまけに滑る人は国立公園の中、第一種特別地域でも自由に滑っている。何というノーズロだというのを随分書かれてました。ほんとに保護したければ、全部国立公園にしてしまうとか、あるいは今、国立公園とは別の制度で立ち入りを禁止できる制度もあるわけですが、ありのままの自然を手つかずで守る、学術的な意味で自然を守るという地域指定もあるわけで、そういうふうに切り替えるとか、そういう手段を取らないと実際は徹底できないというのが事実であります。
日本の今の、先ほど申し上げたような土地とか、人口が多いとかを考えますと、日本の7割がほぼ山ですけれども、例えば農業とか林業とかということを含めると、日本の土地で、ほんとに自然を守るという単独の目的のみに使える土地というのは、実はそんなにないんです。環境庁が発表してます、例えば自然度が1から10までというようなことを分けてますが、その自然度9とか10に入るというのは20%あるかないかというところでして、大半のところは何らかの林業であるとか鉱業の関係の権利が既に設定されてるとか、日本の土地というのは必ず産業と土地所有がダブっておりますので、その中をかいくぐって、あるいはその中に付加して自然を守るというのは、今の制度が広い範囲を保全するためには一番いい制度であるのも、これまた確かなわけです。
ただ、これは申し上げましたように、厳密な意味で、例えばどっかでイヌワシがいた。その生息地をある程度立ち入り禁止にでもしないと繁殖の時期なんか守れない。あるいは高山植物が非常に立派で、そこは人の立ち入りは拒みたい。イリオモテヤマネコが100頭しかいないから、その生息地は動物のために取っておこうというようなこととする場合は、そういうことがやりにくい制度ということであります。一番最初にこういう国立公園制度をとったために、実は後々、例えば鳥獣保護区であるとか、種の保存法に基づく保護区であるとか、すべての保護区のあり方が自然公園法でやってるんだから、ああいう制度でいいじゃないかということとなり、土地を買うという財政的な制約と、土地の所有に対するいろんな社会観念を打破できないというようなことで、そこが突破できないという、後々のためには、前例になってしまった。そういう徹底した自然保護のための区域指定ということに、ちょっと方向が行きにくくなってしまったというのが事実なわけです。
唯一自然環境保全地域というものが全国で15ヵ所ほどありますが、そこは立ち入り禁止だと、全部国有地じゃなきゃいけないという制度にしてあるんですけれども、そう