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ブルがはじけて下がっておりますが、土地所有という財産意識と地価の問題でかなりのことが引っかかっている。今日いろいろ騒がれてる公共事業の予算の問題とか、いろんな工事の質の問題もありますけれども、公共事業のうちどれだけの予算が用地費に消えていくかというのは、聞いたらきっとびっくりするぐらいの額が使われてるわけです。そういう時代というか、日本の社会制度といいますか、そのあたりに一つ根本的な問題があるというのを私どもも常々考えておるし、そこをどうやって打破するかというのが、一つの自然保護を行政的に進める課題であるわけです。

皆さん、日本に国立公園とか国定公園とかというのがあるというのはご存じと思いますが、自然公園法というのがあるんですけれども、その基となってる国立公園法というのが昭和6年にできております。この法律をつくる時に、一つモデルとして考えたのが、世界で一番最初に国立公園ができたアメリカであるわけです(1890年代)。だいたいイギリスのナショナル・トラストが制度的にできたのと同じころなんですけれども、アメリカというのはニューフロンティアといいますか、新大陸ですから、先住民の土地というのは当然あったはずなんですけれども、近代的な土地所有としては未開の地であったわけで、その中で自然の優れたところというのはどんどん切り取って、国有地にした上で国立公園にしてるわけです。それを今の世界で、もちろん世界全体の国立公園というのはそういう制度が多いんですけれども、日本もその時に、昭和6年に、ほんとにやりたかったのはやっぱりアメリカ型(土地を国が所有するタイプの国立公園)を目指してたわけです。

ところが、日本の自然のいいところ、今、国立公園になっております中部山岳だとか大雪山とか、これはいろんな明治以来のいきさつがありますけれども、大半が実は国有林になっておりまして、別の行政が既に所管をしていた。あるいは仮にそういう制度にすると、瀬戸内海だとか伊勢志摩、伊勢志摩は実は戦後ですが、そういう民有地の非常に多いところが指定できなくなるということ、他の行政の圧力というのをどうさばくかというようないろんな問題があって、結局、今の制度、つまり土地の所有を、今、環境庁が指定をしておりますが、その土地を国の土地、環境庁所管の土地にする必要はなくて、地元の合意とか、いろんな熱心な方の支援があれば、国として特定ができるという制度を取り入れております。

実はこれを取り入れたというのは、メリット、デメリット二つございまして、メリットとしては、大変広い地域が指定できるということで、現在、国立公園、国定公園、それから県立公園を含めると、ほぼ国土の14%ぐらいの土地が自然公園法で指定されております。現在、東京の周りはそうでもないかもしれませんが、地方に行って、北海道、東北、中部地方、九州あたりへ行って、周りに山がありますが、高い山を見たら、まず間違いなく何かに指定をされてます。そういうことが言えるほどに幅広い、国土の14%というのは大変な面積でありまして、もちろん人の住んでるところとか農地とか、あるいは本当に林業をやってるところとかそういうところは別ですので、ある程度自然が残ってるところというのは、かなり指定されてるというメリットを生んだわけです。

ところが、一方で、実は環境庁は何してるんだと常に、怒られるネタがいろいろありますね。最近ではオリンピックの滑降コースの問題であるとか、環境庁が何となく力

 

 

 

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