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それから昭和39年の河川法改正で利水、水資源開発が入ってきました。要するに河川事業というのは治水と利水のためにやることが河川法の目的だったんですが、その目的にもう一つの柱、河川環境の保全が入りました。これからは法的にも河川環境を保全しなくてはならない。つまり河川環境を軽視したら、これは法律違反という建前になった。

そのほか河川法改正では、個々の河川の整備事業を計画の段階から、地方公共団体の長、あるいは地方の住民の方々の意見を尊重するということが初めて入りました。従来はそういうことは何ら法的に必要なかった。河川審議会を通して閣議で決めればよかったんです。地方自治をも重視したゆえんです。

この一連の、最近二、三年間の河川審議会は、内側から言うのもどうかと思いますが、これは反体制の方々もかなり評価しております。文面だけはできたが、実行が問題だとおっしゃってくださる方も多いんですが。その審議の段階では、木原さんも専門委員になられましたし、田村明さんもその段階で委員になっておられました。そもそも審議会に、そういう方を入れたことに意味があるんです。従来は建設省OBとか御用学者とか、要するにお役所にとってだいたい都合のいい方が、木原さん、必ずしも都合悪いと言ってるわけじゃないんですが、(笑)つまりお役所が原案を書きますね。それをあんまり文句をつけそうもない人をだいたい選ぶ傾向があるんですが。そのほか生態学者とか住民運動の方も委員に入れたことがいい答申ができたゆえんだと思います。

河川環境ということになりますと、全国画一というわけにいかないんです。従来はいろんな川にランクづけしまして、利根川は超一級の川ですね。首都圏を抱えてますし、産業活動も盛んだし。全国を横並びにして、重要度に応じて治水の規模を決めていたんですが、画一的です。それは数字で解決する社会です。だから、一番重要な川は200年に1回の洪水にも耐えるようにとか、あとは重要度に応じて150年とか100年とか80年とか。ところが、河川環境になりますとそうはいかないでしょう。北海道の川に住んでる魚と沖縄の魚は一緒にはできないです。植物も、それから住民の方々の意識も多分、それぞれの地域の自然特性、社会特性に応じて違うと思いますね。河川環境を重視するということは、それぞれの川の個性、それぞれの地域に住んでる方々の意見、その地域に住んでる方が川の魚とか植物のことはよくご存じだし、見守っておられると思いますね。ですから、これからは河川環境を重んずるということは、川の個性を重んずる、あるいはその流域に住んでる方々の個性というか要望、全国画一的でないようにするということだと思います。

スライドの準備をしてください。20枚ほど用意しましたんですが、あまりーつひとつ丁寧にやってますと時間が切れますので、恐縮ですが、一つひとつの説明は簡単になると思いますが、ご容赦ください。

 

 

 

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