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を申し上げたいのであります。

今までの私の話をお聞きになって、何だ、地方自治体というのが戦後できて、選挙までして知事とか市町村長さんとか議員さんとかがいっぱいいらして、既に分権構造になっているんではないのかというように疑問に思った方がいらっしゃるのではないかと思います。確かに戦後、去年、憲法が施行されて50年になりましたが、憲法ができました時に地方自治法という法律ができました。戦前は、知事というのは勅任官、天皇陛下が任命される国の役人だったんですね。県の職員も判任官や奏任官、要するに国の役人だったんです。単純労務をやる人は別ですけれども、意思決定、政策決定を行うようなポストの方はは全部そういった国の役人だったんですね。自治体ではなかったわけであります。これでは民主的でないということで、地方のことは地方でやる。したがって、自治体は民主的な民選の仕組みでやろうということになったわけでして、今から50年前に初めて地方自治法ができまして、官選から民選、いわゆる普通選挙によります公選の知事、市町村長という仕組みになったのです。

そういった意味では民主化はできたわけですが、その時に制度改革を行う時に、それでは国と地方の仕事の分担をどうするかということにつきまして、真剣な議論がなされなかったんですね。どういうことをしたかと言いますと、今まで国の仕事として都道府県が行ってたことを、これは依然として国の仕事にする。しかし、知事とか市町村長は選挙された、そして県というのが独立した地方自治体という仕組みになりましたから、国の地方機関ではないわけですから、国からその地方団体に仕事をしてもらうようにお願いします。これが、専門用語では機関委任事務と言うんです。要するに国の機関から地方の機関に仕事の委任をします。委任をしますから処理してくださいと。このような仕組みでごまかしたと言えばごまかしたんですね。地方自治体はできたんですけれども、地方自治体の仕事は何かと言うと、地方自治として本当に自治的に自分たちで政策決定をやるという仕事はあまり多くない。ほとんどの仕事が、今まで国の機関としてやっていたものを、依然として国から受託をして、国の仕事として実施しています。

私は兵庫県の知事をしていますけれども、よく3割自治と言われますように、私がやっている、あるいは私はと言ったら語弊がありますが、要するに兵庫県庁がやっている仕事の7割は国の仕事をやっているわけです。3割ぐらいが本来の地方自治体の仕事をやっている。自治事務といっても財産を管理するとか、地方税を課税するとか、そういうようなことがほとんどです。ほとんどの主要な行政サービスは、国の仕事を、国から知事に法律でもって「あなたがやってくれ」と、「あなたがやる責任があります」ということで、機関委任事務という形のシステムになっております。

そういうことですから、よく言われるように3割自治というのは、本来自治体としての仕事は3割であって、ほとんどの仕事は、戦後改革の以前の状態と同じように、国の仕事を国の指揮命令系統のもとに知事がやっているというだけなんですね。そういった意味では、7割に関しましては、国の地方機関であるとさえ、極端に言えば言っていい。そういう状況ですから、今、国と地方の関係が上下・主従の関係にあると言われているわけです。こんなことでは、先ほど言いましたように、もうそろそろ分権の時代でなければうまくいかないということになると、この国と地方の関係を変えなきゃいけな

 

 

 

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