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ていくのではないか。私はそのように思うんです。

午前中のスーザン・ウィルキンソンさんのお話、私もちょっと聞かせていただきましたが、あの中でもありましたけれども、今、イギリスでは余暇時間が増えてきている。したがって、ナショナル・トラストの会員も増えてきたとおっしゃいました。成熟社会に入ってきますと、生産性が上がっていますから、今まで8時間労働をしなければ生産できなかったことが、生産性の向上によりまして、7時間働いて生産できるような状況になっているわけですね。そうすると、同じ生産、サービスをつくるためには1時間余ってきているわけですから、この余ってきた1時間をどう使うかということが大切なことになってきます。おまけに長寿社会、長生きもできるということになっていますから、生涯で考えますと、そういった経済的な行為のための労働時間がうんと少なくてすむようになってきつつある。そうなると、いわゆる余暇時間と言われます、私は余暇とは思いませんけれども、要するに自分たちが活用できる新しい時間をどのように使っていくのか。法律的に何かを決めて、これをやりなさいとか何とかと言ったって、そういうことを国民が納得するはずがありません。みんながいろんなことを考えて、今、自分としてやるべきことは何か、自分としてはこういうことをやりたい、そういうことを考えて、そのことに自分の時間を割く、そのような社会に入っていくだろう。

これもスーザンさんのお話にもありましたように、そういうことに自分が貢献しているということを自分自身で感じた時に人間としての喜びを感じる。そういうことだからトラスト運動が充実してきたということをおっしゃいましたけれども、まさに私は今からの日本はそのような社会に入っていく。大きくなる責任を自分たち同士どうやって分担し合うか。それも分担し合うというようなことになると、非常に暗い、つらい社会のように思いがちですが、決してそうではなくて、今までのように経済的な利益を分配について、お互い火花を散らすというようなことだけでは、人間として、これが私の人生だと納得できるという人は少ないんじゃないか。今、心の豊かさを国民みんなが求めているという意識調査が出てきますけれども、私はその意識調査の結果は、そういうことの反映だと思います。

ほんとの意味の心の豊かさはどういうことかとなりますと、自分が持てる時間、あるいは体力、財力といったものを自分が納得できるような形で使っていると自分が自覚しえた時に、初めて自分の心の豊かさを、あるいは人生に対する満足感が出てくる。そういうことを思います時に、先ほど申し上げましたように、今から大きくなる責任をいかに分担し合うかということについてのシステムをきちんとつくらなければいけない。そのシステムをつくる時に、今までのような官主導とか、あるいは中央集権的なシステムで効率性を重んじてつくるというような仕組みでは、とてもみんなは納得しないのではないか。やはり自分たちが自分たちで考えるという民自律という考え方。あるいは、自分たちのことは自分たちが決定して、自分たちが責任を持つというような分権的な考え方、仕組み、そういうことの上でないと成り立たないのではないかと私は思うのであります。

そういった意味で、環境とナショナル・トラストということについても、基本的な点で、私は地方分権ということが大きなかかわりを持っているのではないかということ

 

 

 

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