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いということになってまいりまして、中央政府の仕事が、国内的な中央集権によって国内のいろんなお世話をするということよりは、むしろ国際的にいろんな政策課題に対してこたえていかなければいけないというような状況になってきております。

それから、中央集権の弊害として、今、大きく言われておりますことは縦割り行政の弊害ということであります。中央政府が全国のことについて集権的にいろんなお世話をするというようなことになりますと、当然専門、専門というのが出てまいりまして、専門集団というのが出てまいります。例えば道路をつくる、あるいは河川をつくる、教育をする、あるいは福祉をやる。この部門部門というのが極めて専門的にでき上がってくるわけであります。頭ではそんなことはないだろうと思いますけれども、実際問題として、そういう縦割りのシステムが出てきますと横の調整というのがなかなかできない。こういう問題が出てきておるわけであります。地域に住むそれぞれの日本国民というのは、トータルの1人の人間として生活をしているわけですけれども、行政サービスのほうが縦割りになってきますと、縦割りにいろんなサービスが出てきます。整合性が取れていないというようなことが大きな弊害として出てきているわけであります。

具体的に言いますと、例えば道路予算なら道路予算というのを政府がつくります。あるいは住宅は住宅の予算というのができます。この地域にとって道路よりは住宅が必要だと思われるのに、道路は道路の論理で予算が出てきますので、地域のニーズに合わせて道路よりは住宅だというようなことが、通らないというようなことになってしまっています。おまけにそういうことが、ジャーナリスティックに言いますと、政・官・財の癒着というものを生んで、利権的な行政になってしまっているというようなことも、そういうことから派生してきているわけであります。

より問題なことは、中央集権的な仕組みですと、国というものがあって、都道府県というものがあって、市町村というものがあって、それぞれ大臣がいたり、知事がいたり、市町村長がいたり、それぞれ議員がいたりするんですが、一つの問題、例えば環境問題なら環境問題についてだれが責任を持っているのかということが必ずしも明確でない。国の責任のようでもあるし、実際やっているところを見ると、条例は県がつくっているようだし、第一線では市町村がやっている。これはいったいどこに最終的な責任があるのかということについて必ずしも明確でない。

私たちは国民一人ひとり税金を納めていますけれども、国税もあるし、都道府県税もあるし、市町村税もある。皆さん方も納めていただいてると思いますが、自分たちの税金がどこにどう使われてるのかは、お分かりになってる方は非常に少ないんじゃないかと思います。

アメリカなんかはシンプルな制度で、自分の納めた税金は何に使われてるかがはっきり分かるような仕組みになっています。いわゆる目的税と言われるものが多い。この税金は道路を建設するために使われている税金、これは教育のための税金、これは福祉のための税金ということがきちっと分かっているような税制の仕組みになっています。今の中央集権体制ということになりますと、それぞれ国と府県と市町村というのがどういう役割分担で、どういう責任を持ってやっているのか。したがって、税金がどこにどう入っているのかということが国民に少しも分からない。こういう不明確さあるわけで

 

 

 

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