そうなりますと、まさにその中核になりましたのは、岩倉使節団のメンバーであったような人たちを中心とする、欧米先進国について非常に豊富な知識を持っている、あるいは情報網、あるいは人脈を持っているテクノクラート集団であります。その専門集団が日本の中核となって日本を引っ張っていく。こういうシステムができたわけでありまして、これが官僚主導のプロトタイプだと思います。
以後いろいろ形は変えておりますけれども、一貫して我が国ではこのようなテクノクラート集団が我が国の指導的立場になって引っ張ってきた。そしてそのこと自体は、発展途上の段階では極めて有効なシステムであったと思われるわけであります。一般的に教育制度も十分でない、あるいは経済レベルも高くない。そういう時にはなかなか情報収集、あるいは外国まで行って勉強するということは特定の人しかできません。そういう特定の人に一生懸命勉強してもらって、そういう人たちがリーダーになって日本を引っ張っていただく。こういうことですから、極めて効率としてはいいわけであります。
したがいまして、明治以来の我が国のシステムの一つの大きな特徴として、この管主導型のシステムということがあります。
それからもう一つは中央集権のシステムであります。日本全体がまだまだ貧しいわけですから、あまりぜいたくなことはできません。限られた資源、限られた人材、これをいかにうまく効率的に活用していくのか、あるいは国土をいかにうまく活用していくのか。これには中央集権を行うということが極めて有効なことは当然であります。
今、この中央集権がいかに有効であるかということで比喩的によく用いられる話といたしまして、アメリカの西海岸に10ぐらいの、ロサンゼルスとかサンフランシスコとかの都市があります。東海岸にもやはりニューヨークはじめ10ぐらいの都市があります。この10の都市と10の都市を結ぶ時にどういうやり方をやったら効率的かということで、さすがにアメリカ人は合理的ですから、すばらしい仕組みをつくりだしたと言われております。それがまさに中央集権的な発想でして、普通10都市と10都市を相互に全部結ぼうと思ったら、10掛ける10の100の線がいるわけですけれども、真ん中に大きな飛行場をつくりまして、それぞれの10都市と10都市がそこに集まる。そこで乗り換えて、またそれぞれの都市に帰るということになりますと、航空路線としては20路線あったら全都市が結ばれる。これは計算したら分かるわけですけれども、100ぐらいのところが20路線あればいいというようなシステムが開発されました。今、日本でも宅急便というのが発達してますけれども、あの広いアメリカ全土で宅急便が成立するというのは、その仕組みができまして、アメリカの全都市からの荷物を1カ所に集めて、そこで全部集配をして、配送先に全部また返す。こういうシステムができましたので、宅急便が可能になったと言われています。まさに中央集権のシステムというのはそういうシステムでありまして、よく我々地方の知事が隣の県へ行くのに、あるいは九州の知事さんなんかよく言われますけれども、ある県の知事さんが隣の九州の県へ行くのに、交通不便で行けない。1回東京へ出て来て、東京から飛行機でその県へ行ったほうがはるかに早いとも言われますけれども、そのこと自体がまさに中央集権のシステムであるわけです。ちょっと余談になりましたが、中央集権というのはよく考えていただきますと、いかに効率的であるかということについては、そのとおりだということになるわけであります。