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今、かなり山奥へいらしても、林家がプロパンガスでご飯を炊いております。すぐそばに木があるのに、木をくすべて、木を燃やしてご飯を炊くということがなくなってしまいました。したがって、木を育てるのに間伐というのを行いますが、間伐というのは抜き切り、間切りですね。その間伐します材木が価値がなくなってきたということでありまして、間伐というのは木を育てるためにも必要なんですが、現在は、山へ行ってみますと、非常に多くのところで木は切りますけれども、抜き切りはしますけれども、それを搬出しないでそのまま山へ残しておく。そしてまたそれが肥料になるのを待っておるというような残念な状態でございます。

それから下草を刈らなければいけない。本を育てるには何年かにいっぺんずつ下草を刈らなければいけないんですが、この下草は単に木を育てるために必要であっただけではなくて、肥料として非常に重要な意味を持っておったわけでございます。農家の方々は、1年のうち半分は米づくりなり野菜づくりに一生懸命汗を流しますけれども、あと半分は山へ入って、そしてそこから草を刈り取ってきて、それを春には田んぼ、畑にすき込んで、そして肥料づくりをやって土を肥やすということをやってきたんですが、これは何百年、何千年とやってきたわけなんですけれども、今や肥料は都市部から化学肥料を購入して、それを田んぼにすき込む、畑にすき込むということになりますものですから、木はあんまり木材として役に立たないわ、その生産過程で、30年、50年木を育てる間に山を経営してる人の副収入のもとであった下草や下枝が、また、間伐材が無価値になってしまったということで、山の経営というのは非常に困難になってきたわけであります。

そこで、山を産業の対象として考えるのはもう駄目だと。そこで森林業と言わないで山業と言うことにしようじゃないかと。そういうふうにして材木を供給する場所としての山というのは値打ちはなくなったんですけれども、しかし、これが国土の保全上、非常に大きなメリットがあると。山に降りました雨というのはいっぺんには下流に流れてこない。木の葉っぱによって受け止められて、そして幹に伝って下ってくる。そしてそれが地下水のもとになって、そしてそれが下流の田んぼにまた流れてくる。ですから、山と田んぼとが非常に大きなダムの役割を果たしてるわけでございます。ですから、木は売れなくなったかもしれないけれども、山を管理するということはどうしても続けなければならないということが一つあります。

それから、最近のことですが、空気、大気の管理というのが非常に大事だと。逆に言えば、大気汚染というのを防がなければならないということが環境問題としてやかましく言われるようになってまいりました。そういう意味で空気の浄化、水の浄化ということを考える場合に、山が非常に大事だということでございます。

そういう役割を果たす山というものをどうやって管理していこうか。それを仮に山業と、そういうものを管理するなりわいを山業と言うとすれば、その山業というのをどうやってやっていったらよろしいかというのが今後の大きな課題ではないかというので、私どもはそういう角度で山の仕事をこれから扱っていくことにすべきではないかと考えているわけでございます。

今、どうも森林の経営はうまくいかないということは、私ども神奈川県だけで言わ

 

 

 

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