味が変わったかもしれないけれども、しかし、森林業そのもの、森林の営みそのものをやめるということはありえないことでありますので、どうとらえたらいいかということになりまして、非常に珍しい造語なんですけれども、「山業」という名前にしようやということになって、そういう提案を申し上げた。県からの諮問でありましたから、県に、諮問に対する答えとして、森林業というのはやめて山業にしましょうという提案をしたわけでございます。まだ残念ながらこの山業という言葉はあまり一般になじんではおりません。一般には森林、あるいは森林業という言葉が使われております。
しかし、私どもは、その森林では駄目だと。山業という感覚でものをとらえなければならないという前提で、それではというので神奈川森林づくり公社というものが県の出資によってできました。そして今日までいろいろ仕事をいたしておるわけでございます。
なぜ山が駄目かということは今日の主題ではありませんから、詳しくは申し上げませんけれども、第1に、山というのは木を植えて、育てて、伐採するわけですけれども、それは言うまでもなく第1に建築用材として使われるわけでございますが、建築用材が、だんだん素材が鉄筋の建築物のようなものに変わっていったものですから、そこで木材のそういう意味での需要が減ってきたというのがまず第1に大きな衰退の原因であります。
その上、数が減りました家屋の建築用の木材が外国から輸入されるようになったということであります。外国というのは、いろんなところがありますが、一番影響を受けましたのはアメリカ、カナダから輸入されるようになったと。海上の輸送費というのは、ああいう重い大きな物を運ぶのには陸上輸送費に比べて大変安いものですから、日本の国内の山から都市部へ運んでくる運送費よりも、外国から船で日本に引っ張ってくる輸送費のほうがむしろ安いぐらいだという経済的条件があることと、外国の木はかなり木の質が均一でございます。カナダはカナダ、フィリピンはフィリピンというふうな違いはありますけれども、フィリピンの木材であれば、カナダの木材であれば、かなり均一でございます。
ところが、日本の木材の場合には、同じ杉でも、秋田の杉と吉野の杉とでは大変違うと。また、日本の木材というのはセンシティブでありまして、一つの山に生えてる木であっても、1本1本に特徴がある。ある意味では特徴が1本1本違うというのはおもしろいことなんですけれども、しかし、かなり多くの場合に、ここに家を建てましょう、材木を買いましょうという場合に、ある均質性を持ってるということが取引の上では非常に重要でありますが、日本の木材というのは地域によって、同じ杉、ヒノキであっても特色がある。悪く言えば癖がある。のみならず秋田杉なら秋田杉の中でもまたいろいろ味わいが違うというようなことがありますので、言ってみれば安くて大量に家を建てようというような時には、日本の杉やヒノキを使うよりはカナダの杉を使ったほうが使いやすいというようなことがありまして、家を建てるのが木造から鉄筋に変わったのみならず、同じ木で建てるのでも、外国産が使われるようになったというのは、木材産業、更には山における林業が衰退してくるようになった一つ大きな理由であります。
それから2番目に大事なことは、燃料が木材質のものから石油質にものに変わった。