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それとは別に、江戸時代には藩が自ら山を持ち、木を植えてという形をとった藩の山というものがあったのが、それが廃藩置県の時に藩から国に渡されて、そして国有林という形で今日まで続いてる形態のものがあります。

そういうふうに現在で言うと国が所有し、管理をしてる国有林の形態と、それから民間の形態とがあるわけでありまして、そこで長い間といいますか、明治から今日に至るまで、今日というのはちょっと不正確ですが、つい20年ほど前までは、あまり問題なく普通の産業として進んできておったわけでございます。

ところが、今からちょうど20年ぐらい前から非常に経営としての山林業というものが成り立たなくなってまいりました。そこでそれに対してどう対応すべきかということがいろんなところで議論されてきたわけでございますけれども、神奈川県の場合にはわりに早くから、どうも今までの形ではうまくいかないんではないかと、山の経営というのは全く新しい発想法で臨まなければならないんではないかという疑問が出まして、そこで県の指導のもとに、山づくり、森づくりのあり方についての勉強会が開かれました。私もその一員として参加をいたしたわけでございます。そこで出ました結論が、森林業というのはもう成り立たんのではないかと。

しかし、山、あるいは木、あるいは森林といったものはいろんな意味で非常に重要な意味を持っております。だれでも気がつくことは、国土保全といいますか、山が荒れたならば、直ちに日本のような雨の多い地理的環境に置かれてるところでは災害のもとになる。それからまた、日本は非常に多くの平野部において田んぼを持ってるわけでございますけれども、田んぼというのは何で成り立ってるかと言うと、非常に多くを自然環境に依存してるわけでありまして、その自然環境というのは、やはり山に降った雨が一定の期間を経て順次田んぼに流れてくる。そして山の部分から肥料を運んでくる。それが日本が瑞穂の国というか、そういう状況で恵まれてる大きな源になってるわけであります。

したがって、材木が売れなくなるといいますか、価値がなくなるといいますか、そういう意味で山林業としては成り立たないとしても、しかし、山、木、森というのは国土保全の見地から言って大事な要素であるからして、その要素を今後とも守り続けていかなければならない。よくこのごろ、山を大事にすると同時に、海を大事にしなければいけない、川を大事にしなければいけないという自然環境問題というのがクローズアップされておりますけれども、そのちょうどクローズアップされるような時期に、私どもはそういう問題を、国土保全とか何とかいう角度からだけではなくて、森林の問題とも絡めながら研究を始めることになったわけでございまして、そしてそこで得た結論は、森林業というのはもう駄目だ。山は国の行政で言うと農林省の林野庁というところで管理されておるわけでありますけれども、行政が行われておりますけれども、いわゆる森林業というものは、極論するともうやめたほうがいいと、転換したほうがいいということが出てまいりました。

さあ、それじゃ何という名前をつけようかと。森林業という業、これはやっぱりいろんな意味で非常に大勢の人がそれに従事してるわけでございますから、それの持つ意

 

 

 

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