「神奈川森林公社のあゆみ」
高木文雄 森とむらの会理事長 元国鉄総裁
司会 おはようございます。ナショナル・トラスト協会の創立5周年記念の環境とナショナル・トラスト講座の第2日目を開催させていただきます。こちらにございますように、「21世紀に伝えたい環境」というテーマで、社団法人日本ナショナル・トラスト協会の主催で開催いたします。
昨日は「ナショナル・トラスト運動の理解のために」と題しまして、先生方のお話を伺いました。本日は、続きまして「運動の事例と今後の展開」という形でお話をいただきたいと思います。
では、早速今日の第1番目の講師の先生をご紹介いたします。高木文雄先生をご紹介いたします。高木先生は(財)森と村の会の理事長、横浜MM21の会長さんでもいらっしゃいますし、また、元国鉄総裁として、国鉄にもかかわってこられました。本日は、神奈川県にあります神奈川森林づくり公社の会長というお立場で、「神奈川森林づくり公社のあゆみ」についてお話いただきたいと思います。
では、高木文雄先生をご紹介いたします。どうぞ。(拍手)
高木 おはようございます。朝早くからご勉強で恐縮でございます。私はいろんな仕事をやってるんですけれども、その中の一つとして、神奈川県で森林づくり公社という制度がございまして、そこのお世話をかれこれ七、八年やらせていただいておりますので、その実際のやっております仕事の内容として、直接トラスト運動という名前は使っておりませんけれども、趣旨なり狙いなりは大変共通した問題がありますし、日ごろからトラスト運動については関心を持っております関係で、私自身の最近における感想といいますか、考えてることといいますか、申し上げてご参考に供したいと思います。
今、ご紹介しました神奈川の森林公社というのは、これはいわゆるトラスト運動とは若干趣を異にしておりまして、基本的には、今から10年ぐらい前に県が中心になって、何とか神奈川県における森林問題の取り組みを今までとは違った形でやりたいと。そこで県のほうでかなりの額を用意をするから、そこでひとつ好きなようにっていうか、やりたいように、やってくれということでスタートしたわけでございます。
したがいまして、全国いろんなところで行われております歴史とか自然とかを守るためにボランタリーに団体をつくって、そしてこの目的を果たそうという数多くのトラスト運動とはやや趣が違うわけであります。トラスト運動と言うと非常に運動自体もなかなか難しい点がいろいろございますけれども、中でもどうやってそのファンドといいますか、お金を集めてくるかというところに難しい問題があるだろうと思うんですけれども、実はそういう悩みは、私ども、持ってないという点で、非常に恵まれた条件のもとにあるということが言えるのではないかと思っております。
しかし、日本で林業というのはどういう形で行われてきたかと言いますと、二つのグループに分かれておる。一つのグループは、個人個人の方々が、山持ちさんが山を持って、そして木を育てて、そして木を切って、売却してと。企業として、産業としてそういう営みが行われてきてるわけでございまして、明治に入ります前、江戸幕府の時代には相当程度それぞれの地域における藩侯がリーディング・ポジションを持っておったということはありますけれども、基本的にはやはり私企業であるという形のものが一つあります。