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から問題を考えることでもある。さっき申し上げたとおりに環境という言葉はもともと人間という生物という角度から考えているんですね。漠然となんか大きな二酸化炭素がどうかなっているなんて、人間から離れちゃったような話ばっかりしているわけじゃないんです。人間サイズで見てどうなのかということです。

その人間サイズで考えるという問題。そして生活の中身の豊かさですね。つまり、この目的は未来への人間環境の確保。将来の人間環境をきちんとしたものにしていく、人間にとってのいい環境にしていくということが重要ですし、現在の住民の心身の充実、充足ということになろうかと思います。

こうやって見てみますと、やっとレジュメの3に来たんですが、あと五、六分しかないですけど。多くのこのナショナル・トラスト運動と平仮名の「まちづくり」というのは共通性があるんですね。しかし「まちづくり」は非常に範囲が広い話です。私が始め出したのは都市というところからスタートしたんですが、都市を考える場合に、自然も要るし、農学も何もいることになる。つまりトータルな環境です。私も長く環境庁の自然環境保全審議会の委員をしておりましたが、じゃ国立公園は、何のためにあるか。もちろん生物の方は、自然の貴重なる生物がそこにあるからということになります。それももちろん重要なことでしょう。しかし、都市の人間にとってそういう自然公園があるということは大変に心を和ませてくれるものなんですね。

日本で国立公園運動をさきにやられた、私と名前が同じような、田村剛先生という方がおられましたが、この方はそういう国民に広くこういうものが自然のままで利用されなきゃいけないという考え方をお持ちでした。だから、国立公園には自然が保護されていりゃいいという考え方と、もう少し利用された方がいいという方と両方いるんですが。いずれにしても、私はこれだけ都市化が激しくなってしまうと、どうしても人間どこかに安らぎが欲しい、自然も欲しい、そういう自然がきちんと、それも全部都市化してしまったら人間が行くところがないわけですから、都市化すればするほど自然の価値が貴重になるわけですね。そういう意味の自然。

そういうことを考えていきますと、環境全体を考える中で都市の問題もあるわけです。あるいは都市の問題から考えると環境全体の問題になる、お互いに相互関係があるんですね。

広い意味で人間の環境をよりよくしていこうということに考えると、その中でナショナル・トラストというのはその運動と一環になるんではないか。さっきのようにまちづくりとなりますと、一応皆さん、税金を払っている立場からすると全員加盟になっちゃっているんですね。ナショナル・トラスト運動はその中で特に興味のある方がさらに自分たちが負担をして参加をされるということですから、ナショナル・トラストにかかわらずいろんな運動があっていいわけですが、これは共通の基盤に私は立っているというふうに思います。

地域への視点と愛情を呼び覚ましたナショナル・トラスト運動というふうに書きましたが、あんまり漠然とこう言っても、地域というのはピンと来ないんですね。ふだんは気がつかないで日常的に住んでいる。しかし、たとえば鶴岡八幡宮の裏山が宅地開発されそうだという問題になると、初めて、あー、そうだ、鶴岡八幡宮ってあることは知っ

 

 

 

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