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ておられる言葉だと思います。

次に、「まちづくり」の方です。私の専門はプランナー、地域の政策プランナーと言いましたけれど、これをやさしく言えばまちづくり屋ということになるんですね、このごろの言葉で。この平仮名の「まちづくり」というのは、私はかなり主張して、10年ほど前に岩波新書で『まちづくりの発想』という本を書きました。そのときに本屋さんは、平仮名だけじゃ困るんだ「街」とか、「町」とかいう字にしてくれないと、何だか平仮名で流れ過ぎてちゃ困るんだというふうに言われたんですが、私はどうしてもこの平仮名だということを言って頑張っちゃったんですね。

それはさっき申し上げたような私の環境的な考え方で、モノだけでなくトータルなものに広く考えるためには、ハードもソフトも含めたトータルな環境として考えるには、平仮名の「まち」という字がふさわしい。漢字を書いてしまうと、ややハードに偏重になる。もっと全体的なものとして考えるなら、この「まち」が私の言うまさに環境に当たるんだというふうに考えたわけです。2−2に書いてありますとおり、ですからトータルな「まち」なんですね。

ところが、そのまちづくりでもう一つ大変重要なことは、これに近い言葉で行われてきたことは都市計画であるとか、都市開発であるとか、都市整備であるとか、あるいは地域開発であるとかがあります。私もそういう名前でいろいろ仕事をしましたし、大学で教えもしました。しかし、それは多くの場合には市民は入ってこないんですね。旧来の、例えば都市計画法、昭和43年に改正されましたが、昭和44年に施行、新都市計画法が施行されるまで、都市計画というのは国が行う事務なんですね。今でも大体そうなんですけれども、実質的に。でも、たてまえ上、全部決定権から何から、あらゆることは主務大臣が内閣に図って決めると、市町村というのは、それを決まったことを行うだけであるというたてまえになっていたわけです。その後、少し変わりましたけど。今度、もう少し変わろうとしているんですが、実質的にはそういうことが続いております。

あるいは一時、高度成長期に地域開発ブームというので、いろんなところに工業地帯を作るという、新産業工業都市とか、いろいろあったんですが、新産業都市とか。でも、これも全部中央の主導なんですね。地域から考える発想がない。その当時の地域開発という言葉の解説をした方の本を読みますと、地域開発というのはその地域のために行うんではないとはっきり書いてあるんですよ。これは国家目的のために、国家が新しい工業地帯をこしらえて、そして安いものをこしらえて、たくさん外国に売りつけるためにやるんである。だから地域のためにだけ行うような、そんな矮小なものは地域開発とここでは言わないんだ。今、もちろんそういうことを言う方はいませんよ。でも、昭和30年代には明快にそういうことを言っていたんです。

それに対して私が言う、まちづくりというのはそうじゃない。地域を地域のために工業開発してもいいけど、工業開発するんでも地域のためにならないと困るんじゃないのかな。そうすると、その地域の中でトータルに自然の問題や開発の問題も一緒に考えられるんだね。中央から、ここがいいからというだけでやってしまうと、これはちょっと一方的過ぎるんであって、トータルな環境的な発想にならない。

つまり、「まちづくり」と平仮名で書きましたのは、今まで中央ですべて決めてい

 

 

 

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