す。ということは、これはその数年後につくられた古都保存法を制定せよと初めて世間に、社会に訴えた文章ではないかと思っております。ですから鎌倉のこのナショナル・トラスト運動こそは古都保存法の発祥の地である、鎌倉の鶴岡八幡宮の裏山には古都保存法の発祥の地であるという本柱が立っておりますが、まさにそうだと言えます。
この日本での運動がその後ずっと拡大してまいりまして、知床の100平方メートル運動ですね。これはもう皆様、ご存じだと思いますが、そういう原生林が開発でどんどん切られていったと。そういうところをもう一遍買い取って、土地を買い戻し、そして植林をして原始の姿に戻そうという運動であります。さらに、例えば和歌山県の田辺市の天神崎とか、あるいは静岡県の柿田川とか、いろんなところで、今、40ヵ所ほどでナショナル・トラスト運動が展開されています。
こういうものに共通する特性というものは、第一に自発性ですね、住民が自発的にお金を出したり労力を奉仕して環境を守ろうということ。それから教育性といいますか、例えば知床には大阪の小学校の子供たちがクラスで一人、200円ずつお小遣いを貯めて、40人のクラスで8000円になったといって募金に応じているわけです。子供たちは作文を書いていますが、私たちはまだ子供なので北海道には行けませんけれども、大きくなったら私たちが夢を買った知床の原生林の下で同窓会を開きたいので、それまで大切に守ってくださいと書いてありました。こういうふうなやっぱり教育的効果が非常に大きいと。
それから、いろんな特徴があると思いますが、先見性ですね。将来、壊れるかもしれないところを先手、先手を打って守っていこうということであります。
それから協力、お互いに協力し合うと。各地のナショナル・トラストが協力するばかりではなくて、都市の人がああいう北海道の原生林のところに住んでいる人々と経済的に寄金をすることでつながることによって、精神的にも連帯を深めようという運動であります。
そういうものの横の連絡をとって、この運動を盛り上げようということで、「ナショナル・トラストを進める全国の会」というものが今から16年前に作られました。先ほどのお話にもありましたように、原文兵衛先生は環境庁長官としてその会に行かれたわけで、その全国組織を作るときにも非常に関心を示してくださいました。そういう運動が10年間続いて、その実績の上に立ちまして「社団法人日本ナショナル・トラスト協会」というものができているわけであります。
現在、40カ所ぐらいの横の連絡をとり合っておりますが、毎年、全国大会を開いております。今年は八戸で開きますが、昨年は二重県の津で開きました。もう16年目を迎えております。また国際交流も進めておりまして、そういう実績の上に立って、明日、ウィルキンソンさんのお話もあるわけです。
今まで日本のことをお話ししましたが、やっぱりスライドで皆様の視覚に訴えるのもいいと思いまして、本当、時間がございませんが、五、六分、お見せしたいと思います。
ここにあるのが鎌倉の鶴岡八幡宮です。これが鶴岡八幡宮、あの裏の方に住宅を建てるというんですから、とんでもない計画であります。
次は御谷の現場です。先ほどの古都保存法発祥の地という本柱がこれであります。