基調講演「エネルギー問題と公害」
有馬朗人 理化学研究所理事長 中央教育審議会会長 元東京大学総長
それでは、本日、「ナショナル・トラスト運動の理解のために」という1日のテーマがつけられておりますが、第一番目に基調講演をお願い申し上げました有馬朗人先生をご紹介申し上げたいと思います。ナショナル・トラスト運動は広い意味で未来の子供たちに残す環境作りというふうに言われております。未来の子供たちにどのような環境を残すかということを考える場合に、幅広い点を私たちは勉強していきたいということで、本日は「エネルギー問題と公害」というテーマで先生にご講演をお願い申し上げました。中央教育審議会会長、元東京大学総長でいらっしゃいます有馬朗人先生でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
有馬 おはようございます。きょうは皆さんに教育の問題、心の教育について先ず申し上げたい。心の教育が今、非常に叫ばれているけれども、戦後50年間において、高等学校、中学校、小学校で道徳というふうなものが極めて人気のない学科であった、こういうことが、今、大きな影響を与えておりますね。おとといでしたか、大きな殺人があったし、こういう時代をどうやって乗り越えていくか。また、ここで道徳なんて言ったら、皆さん、反対されるだろう。嫌いな人が多い。特に小中学校の先生には嫌悪する人が多い。このような状況でいいのかということを最初に申し上げたい。
ただし、心の教育ということは教えられるものではありません。育ててゆかなくてはならないもの。この際に家庭の教育への復活ということをお願いしたいと思っているわけです。
こういうことから始まって、きょうはいささか厳しいお話をいたしたいと思う。新エネルギー、新エネルギーと言うけれども、本当に電力、それでやって行けるのですかというお話をしようと思う。とっても太陽だけでは日本の産業なんか持ちっこない。それから炭酸ガス、炭酸ガスと恐れるけれども、それを減らしていくものは科学技術の推進しかないんだということ。それから国民一人一人が省エネルギーの覚悟をしないといけないんだというふうな点で、厳しいお話をいたします。
まず最初に教育における一つの改革についてお話をいたしたいと思います。中央教育審議会として、現在、ねらっていることからお話をいたしますが、まず最初に環境教育に一体どうやって臨んでいくか。先ほどは心の教育についての家庭の育てる力を復活せよということを申し上げましたけれども、環境問題等に対してどう考えていくか、これを最初に申し上げたいと思います。
次にエネルギー問題、これがきょうの中心であります。3番目に公害問題、公害問題をどうするかということについて、エネルギーと非常に密接な関係があるということを、きょうしみじみとお話をいたしたい。その上でナショナル・トラスト協会の役割というものがどういうところにあるか、そして結論を申し上げたいと思います。
まず最初に環境教育の問題でありますが、第1に中央教育審議会としての考えを申し上げたいと思います。環境教育を大いにしなければならないということから、今回、総合的学習の時間を設けることにいたしました。総合的学習の時間はどういうことを望んでいるかは後に申し上げたいと思います。そこでは環境保全、エネルギー問題等々を