既に日本でも、北海道の斜里町の100平米運動というようなものが始まっておりましたし、和歌山県の天神崎の保存運動も始まっておったわけでございます。そこで私は帰国しまして、そういう全国的な一つの組織ができないものだろうかということで、きょうも講師でお話しになりますが、木原先生など専門家の方々にお願いして日本ナショナル・トラスト設立研究会というものを、当時の私、環境庁長官をやっておりましたが、諮問機関として作っていただきました。
そういうようなことで、だんだんと日本のナショナル・トラストの全国連絡組織というものも作るようになったわけでございます。毎年、ナショナル・トラストの全国大会をやっているんです。これは私がちょうど環境庁長官をやっていました昭和57年に、北海道の斜里町でもって全国のぽつんぽつんとあったナショナル・トラストの関係者に集まっていただきまして、フォーラムを開いたわけです。私ももちろん行ったわけですが、それがきっかけになって、「ナショナル・トラストをすすめる全国の会」という組織が生まれました。
各地のナショナル・トラスト関係者は非常に一生懸命やっておられるし、我々も及ばずながら皆さんボランティア活動でもって一生懸命やっているんですけれど、どこも非常に資金的に苦しんでいる、これが実情なんですね。
イギリスのナショナル・トラストは、1895年の発足です。ことしは1998年ですから103年ばかりになるわけですが、イギリスのナショナル・トラストも初めのうちはなかなか普及しなかったのが、やっぱりさっき言ったように税制の関係、その他いろいろな特典を与えられたということが一つの発展したきっかけであります。同時にまた国民がそういうものをどうしても、残していこうという情熱をもったからです。今は恐らく二百数十万人になっているんじゃないでしょうか。
日本にも、やっぱり日本的ないい自然環境、あるいはいい歴史的な建造物等もまだまだたくさんあるわけでございますから、皆さんとともに今後何とかしてこういうものを残していきたいというふうに思っているわけでございます。
そういうような意味合いでもって、ちょうど社団法人になりました5周年を記念して、この講座を開いたわけでございます。今日と明日の両日、各界のすばらしい先生方にいろいろとお話をしていただきたいと思いますし、またイギリスのナショナル・トラスト本部からもおいでになっていただいて、イギリスの事情もよくお話ししていただきたいと思っているわけでございます。どうかそういうようなわけで、私ども、この講座が初めての試みでございますが、本当に2日間、皆さんのご協力をいただきまして何とか実りのあるいい講座にしたいなというふうに思っているわけでございます。どうぞよろしくご協力のほどをお願いいたしまして私の冒頭の開会の言葉にさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)
司会 本講座の開催に当たりまして、当協会会長の原文兵衛よりご挨拶を申し上げました。