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特別市が県と同格といっても、広域性を旨とする業務について県が遂行することは、特別市の物理的領域から当然である。しかし、特別市の場合は、通常の市町村と県の業務に関する調整に加えて、県との同格性を原因とする県との業務および権限に関する調整、さらに業務の共同実施に関する必要性は一層高くなる。そのために、第61条/Aでは、県と特別市の議会による調整委員会の設立が規定されている。調整委員会は、10人の委員から構成され、県議会議員と特別市議会議員から半数ずつ選出されることになる。

 

(3) 業務と権限

 

地方自治体の業務内容は、市町村と県とでは異なる。

市町村の業務内容は、地方自治法第8条(1)および(4)によって、列挙されている。それによれば、市町村の領域において、全般の発展および計画策定、各環境の保全、公営住宅の運営、上下水道の整備、公共墓地の運営、各交通機関の運営、公衆衛生、幼稚園および初等教育、消防および治安、雇用、医療,社会福祉、住民の一般教育・科学・芸術・スポーツ活動への支援、民族およびエスニックの権利保障などが基本的業務である。

また、県の業務内容は、地方自治法第70条(1)において列挙されている。主な業務としては、中等学校・専門学校・単科大学の運営、文書館・博物館・図書館の運営、特殊な専門的医療、各環境保全、観光、雇用および職業訓練、民族およびエスニック少数派の権利保障、広報やそれらに関する地域的調整である。これらのうちで、教育機関および文化機関の運営は、市町村においても遂行可能であるが、市町村が遂行しない場合、県に拘束的業務として課せられるものである。

市町村の業務と県の業務との相違は、前者が基礎的サーヴィスを提供するのに対して、後者においてはその専門性と広域性が顕著であるという点である。これは、いうまでもなく、基礎自治体としての市町村と広域自治体としての県という、ハンガリーの地方制度における両者の位置づけの差から起因しているものである。しかし、両者の地方制度上の位置は、全く同等である。また、市町村の業務との調整および政府の地域計画との調整は、県に設けられる地域発展評議会において行われる。

 

(4) 財政

 

ハンガリーは、1990年における地方自治法施行以前から、資源の再配分における中央政府の権限縮小に取り組んでいた。これは、中央政府による規制が市場経済の発展を妨げ、それが中央政府自身の利益を損なうという見解に基づいていた。

 

 

 

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