(3) 地方自治にかかわる事例
直接に地方自治にかかわる事件はそれほど多くはない。地方自治制度がなお形成途上にあることが、おそらくはその理由であろう。以下にすべての事例を紹介・検討しておく。
? まず、連邦地方自治法(1995.8.28)の58条1号、59条2項の合憲性が審査された事件(1996.5.30)を取り上げる(『憲法裁』96-3)。
連邦地方自治法58条1号によれば、地方自治体における地方自治の代表機関および地方自治体の公務員の選挙は、法律の施行後16か月以内に行なわれることになっている。
この法律によって、国家の公務員、国家権力機関によって職に任命され、またはこの法律が定めるその他の手続で任命された地方行政長官(地方自治体の長)は、法律の規定を考慮してしかるべき機関および公務員の選挙(任命)が行なわれるまでのあいだその権限を保持するが、その期間は法律の施行後16か月を越えることはできないことになった。
これを争った申立人が、地方自治体の代表機関および公務員の選挙の期間の決定は、連邦と構成主体の共同管轄事項と定められている地方自治の組織の一般原則には関係がないと考え、したがってこの問題は連邦法律で解決される必要がないとみなし、たとえばコミ共和国大統領は構成共和国の権限であり、ロシア連邦大統領は地方自治体の代表機関および公務員の選挙の期間に関する問題の解決は地方自治体の権限の範囲に属し、それを連邦法で定めるのは地方自治の権利を侵害すると訴えた事件である。
憲法裁判所は以下のように論じている。
連邦地方自治法の当該の条項は、法律の施行にかかわる事項であって、憲法およびこの法律の定める地方自治の組織の一般原則にしたがった地方自治制度の実現およびその形成の保障の手続を定めたものであり、16か月という期間は、この法律が制定された時までに選挙が実施されず、国家の公務員、国家機関によってその職に任命された公務員がその機能を遂行していた地方において、選挙によって新しい地方自治機関を形成しなければならない期間を定めたものである。
選挙の期限および任命による地方行政長官(地方自治体の長)の権限保持の期限を定めるこの法律の規定は、人民が地方自治機関をとおして自らの権力を行使する権利、地方自治機関における市民の選挙権および被選挙権、レファレンダム、選挙、その他の直接的意思表示により市民が地方自治を実現する権利などロシア憲法が定める権利の保証ともみなしうるものである。このような権利の規制はロシア連邦の管轄事項とされ、その擁護はロシア連邦と構成主体の共同管轄事項と