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ア憲法に違反している。

こうして判決は、構成主体における権力分立原理の徹底と、連邦の国家権力機関の権限への構成主体による侵蝕を拒否したのである。

? タムボフ州憲章(基本法)の一連の規定の合憲性審査事件判決(1997.12.10)(97年12月24日付『ロシア新聞』)もまた、州レベルでの権力分立原理の徹底にかかわる事件である。ここでも、憲法裁判所は、刑法の署名を州議会議長が行ない、行政副長官(副知事)の任免について議会の同意を要し、行政庁が議会に報告義務を負うとした憲章の規定を違憲と判断している。もっとも、州議会の行政庁に対するコントロール機能を一般的に否定してはおらず、会期における議員の質問権や執行機関に報告を求める権利までを否定したものではない。

? ハカシア共和国憲法74条および90条の合憲性審査事件判決(1997.6.24)(97年7月2日付『ロシア新聞』)は、憲法の規定をめぐるものではあるが、後にふれる選挙権・被選挙権にかかわるものである。ハカシア憲法の74条は、最高会議議員の被選挙権を5年以上ハカシアに在住する市民に限定し、同90条は、首相について7年以上の在住を条件としていたため、ロシア連邦大統領が提訴したものであるが、憲法裁判所は、そのいずれもがロシア憲法に違反すると判じている。

憲法裁判所が扱った事件の一覧にあるアルタイ地方憲章の合意性審査事件については別の機会にふれたことがあるので、そちらを参照していただきたい(8)。

? 一連の構成主体における選挙法の合憲性の審査事件がある。

上記のハカシア憲法の合憲性審査事件のような事例は、構成主体の選挙法をめぐって数多く存在している。選挙法に関連する事件は、これとは異なる事例もあって、いくつかのタイプに分れる。ひとつは、構成主体の議会または行政長官(大統領や知事)の選挙の実施にからみ、その延期の是非をめぐるものであり、いまひとつは、ハカシアの例のような選挙権・被選挙権の制限的規定をめぐるものであり、最後は、リコール手続に関するものである。また特異な事例としては、カリーニングラード州議会の議員について独自に不逮捕特権などを定めていることを、連邦の管轄を侵すものと判じたものがある。

ここでは、リコール法の事例のみを簡単に取り上げておきたい。事件は、モスクワ州議会の議員が選挙民にリコールされたことに端を発し、当該議員が連邦の「議員の地位に関する法律」に定める議員の任期の短縮にかかわる規定とリコールとが抵触すると訴え、州法であるリコール法そのものの合憲性が争われたものである。憲法裁判所は、これについて、連邦と構成主体の管轄事項および権限の区分という観点からして、憲法上問題のないことを結論づけている。

 

 

 

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