られる。
ところで、実際に常日頃地道に改革を行なっている階層は、日米ともにミドル(中間管理職)であるが、日本のように稟議性が強いところでは、ミドルによる変革が有効である場合も多い。
また、企業における組織の変革を促すのは、第一にやはり顧客の意向・行動なのであるが、ライバル企業の行動、すなわち市場の影響も大きい。顧客とライバルの行動について迅速に反応しなければ企業は生き残れないため、この「顧客」「ライバル」という2つの要素は企業に確実に組織変革を起こさせる。
「顧客」「ライバル」以外に企業の組織変革を促すものと言えば、1つは「世論」である。社会の価値観に変化が生じると、企業行動倫理もマーケティングも変化し、すると、企業はこれに対応するため組織を変革せざるを得ない。もう1つは、もちろん、広い意味での「企業環境」であり、現在では、情報化、少子高齢化、グローバル化、技術変化等が企業を動かす要因となっている。
また、「破綻」も変革を促す要因の1つである。すなわち、破綻を避けるためには改革が要る。したがって、破綻がないところ、例えば自治体には変革が起こりにくいとも考えられる。
(6) 企業変革の3要素
企業変革を構成する3要素は「リストラクチャリング」「リエンジニアリング」及び「リオリエンテーション」であると考えられる。
「リストラクチャリング」(リストラ)とは、事業や組織を再編成すること、つまり構造を変えていくことにより変革を促すというものである(構造面からの変革)。一方、「リエンジニアリング」とは、同じ活動をより効率的なプロセスで可能とすることである(機能面からの変革)。
リストラクチャリングとリエンジニアリングとはいわば車の両輪であるが、この2つだけでは企業変革を分析するには不十分である。まず組織活動の「意味づけ・意義付け・位置づけ」による企業の再方向付け、すなわち「リオリエンテーション」がこの2つに先だってなされる必要がある(意味面からの変革)。
(7) 組織のガバナンス
組織を変革するには、強力なリーダーシップが必要である。また、それを株主や組織構成員が支持することも重要である。すなわち、組織のガバナビリティが問われる。
しかし、現実には何と言っても、組織内の人間の行動原理が変革志向にならない限り、組織はやはり変わらない。まず、変革に意義や意味があり、これに組織の構成員が共感・共鳴することが必要である。さらに、変革する者が、それによって(プラスに)評価されなければならない。
ここでいう変革というのは、組織が変革志向を持つということである。つまり、何でも無闇に変えればいいということではなく、常に組織を再点検・見直し、必要とあれば行動を起こす企業風土を変革志向組織と捉えるわけである。
(妹尾堅一郎/産能大学経営情報学部助教授)