が保障された民主主義社会では、対抗勢力の代替案策定も、本来、自由なはずである。
5 むすびにかえて−協働と競争:制度環境としての情報公開−
しかし、パブリック・コミュニケーションが創造的・生産的機能を発揮するようにするには、もう1つ考えるべきことがある。もともと政治に対立はつきものである。それを克服する王道は、多くの人々が進んで受諾できる優れた政策の創出である。民主主義が話し合いを尊重すべきだとする理由は、対立を止揚するより優れた政策を創出するコミュニケーションの創造的・生産的機能に期待がかかっているからである。しかしながら、政治コミュニケーションが対立の中で展開するコミュニケーションであるという、まさにこのことが、創造的・生産的機能の阻害要因になってしまう危険を伏在させている。対立への対処には2つある。1つは、お互いが受諾できる、より魅力的な解決を創出することである。もう1つは相手に打ち勝つことである。コミュニケーションは協働に向かって展開するとは限らない。相手を打ち負かし自己の主張を通すための手段として言説を利用することが少なくない。とりわけ、対立をはらんだ政治コミュニケーションでは、この動機はないほうが珍しい。しかし、この動機を放縦にまかせると、グループ内の談合的言説と対抗勢力間での隠蔽・虚偽・詐術の言説がコミュニケーションを支配するようになる。そうなれば、コミュニケーションは勝つために手段を選ばぬコトバの争いに堕落する。騙されないで勝利するには、相手の言い分の良いところや尊重すべきところに耳をかさず、ひたすらその欠陥をあげつらうにしくはない。これでは協働どころではない。知恵の創発など期待すべくもない。コミュニケーションをこのような堕落から守るためには、隠蔽・虚偽・詐術の言説を防止しなければならない。また、その疑惑を容易にチェックできるようにしなければならない。そのためには、公共のことに関する情報の公開・開示やアカウンタビリティ(説明の義務)など、広い意味での情報公開が制度化されていなければならない。疑惑がチェックされないままだと、疑心暗鬼が拡大し、言論は堕落する。そして、政治不信が蔓延する。また、さまざまな勢力がより優れた政策案を策定できるためには、必要な情報が権力側の勢力ばかりでなく在野勢力にも等しく入手可能でなければならない。政治コミュニケーションにおける協働と競争のミックスは情報公開を不可欠とする。したがって、この制度はパブリック・コミュニケー