[廃校事例] 森のくらしをデザインする匹見ウッドバーク
島根県美濃郡匹見町
広葉樹文化の薫る郷づくり まちづくりのシンボル施設
発端:
昭和59年、「匹見の特徴を活かす林業の展開と新しい観光産業の創出」というかたちで、豊富な樹種を持つ広葉樹林を活かしたまちづくりが始まった。
平成元年、益田農林高校匹見分校が廃校となり、その校舎の活用と合せて匹見町の「木を活かしたまちづくり」のシンボル施設として、ウッドバークを建設。
内容:
? 樹種が豊富な広葉樹林を活用し、樹に付加価値をつけ、木工産業を重点的に振興することとした。
? 5年間の取り組みの結果、木製パズル、森の器などの製品化が行われ、匹見町を代表する産業へと成長しつつある。
? ウッドパークは、こういった木工加工品の展示、販売を中心的に受け持つ一方、世界のパズルの常設展示や各種研修会場の提供などを行っており産業振興、観光、都市交流などに関する総合的情報発信基地としての性格を併せもつかたちになっているシンボル施設としての機能に加え、今後のまちづくりの中心となることが期待されている。
? 「森林のくらしをデザインする」を施設運営のコンセプトとしている。
効果:
採算性と公共的役割のバランス
観光施設としての側面を持つために、施設の収益性、採算性をどのようにして確保していくかということが常に問題となり、部門ごとの会計管理を行っている。観光施設として、観光的側面と町民との対話という2つの重点課題を1つにまとめ、運営をしていくことは非常に複雑な対応を迫られる場合が多い。
第1点は、まちおこしということが少しづつではあるが、町民の中に広がりつつある。これまでの活動の蓄積もあり、自分たちの住む地域について真剣に考えようとする人たちが増えてきた。各種教室、高齢者問題、埋蔵文化財の公演会などへも多くの人が仕事が終わったあとに足を向けている。
第2点は、「森の大学」などの各種教室の開催により、今まで身の回りにあった普通のものが、自分たちの暮らしを豊かにしてくれる宝物に変わるということを体験した。
課題:
高齢化、採算化、環境設備が課題
? 最大の問題は、地域全体の高齢化である。本施設への影響も同様に、繁忙期の人手の確保や新製品の開発などが困難になることが予想される。
? 全体の採算性をどのように確保するかという問題である。自主財源の少ない匹見町は、どうしても収益を最大限に高める必要があり、そのための投資をどの程度行うかが、議論の分かれるところである。
? 地域の生産力をバックアップする環境をどのように整えていくのかという点で、素材の調達、一次加工、流通、販売といった全体的な環境をどのように整えていくかが、今後匹見町が良質な生産力を持てるかどうかの分かれ道となってくる。