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[一般事例] 海、“産業”振興から“保養”の場へ

新潟県佐渡郡小木町 (佐渡島)

 

発端: 無法ダイバーによるサザエ、アワビの密漁が横行し、警察が出動する騒ぎが日常化していた。

 

経緯: 昭和63年、漁師とダイバーの共存共栄策として、「小木方式」といわれる潜水解放区域を設定した。それは漁場管理と漁業操業の権利を尊重するなかで、海洋・海浜のレクリエーションおよびマリンスポーツの健全な発展をも目的とし、漁協・管理組合・町の間で締結したものである。PRに努めたところ、以後地域外での潜水はもちろん、無法ダイバーも皆無となった。

 

内容:

? 町では、ダイバーが安全にダイビングを楽しむため、エアー充填、シヤワー施設を建設し、ダイバーの受け入れ態勢の整備を図った。施設の維持管理と地域活性化のため、地元住民による「南佐渡海洋公園管理組合」も設立。

? 「公設民営方式」による海の活用事例のスタート。利用者は予定をはるかに超えて千人超。このためダイバーの要望を入れ、休憩・宿泊施設も建設。

? 管理組合は、運営資金3,000万円を農林金融公庫、漁協などから借り入れて発足。ダイビングセンター、クラブハウスに各2人とインストラクター2人の計6人が常駐。繁忙期にはパートを雇い入れるなど、地元若者の雇用の場となる。平成6年、発足後3年目、単年度収支が黒字に転換し、累積赤字の解消も間近

? 交流事業にも力を入れ、「マリンフェスティバルin佐渡島」を毎年10月に開催する一方、女性が来ると1人を無料とする女性ダイバーサービス事業を行っている。また、各種イベントも実施し、誘客に努めている。

? 「漁師体験事業」にも取り組んでいるが、これには年間400人余の修学旅行生の利用がある。佐渡島へのダイバーの入り込み数は、元年の3,000人から8年には7,200人へと急増し、地域経済に少なからず効果を与えている。

? 平成3年、宿根木地区が国の重要伝統的建造物保存地区に指定されて以来、「千石船の里づくり」が始まる。「町並み保存地区」に指定されたことにより、現在、住んでいる一般家屋を景観保存のために改築する場合には、改築費の一部を補助する制度を設け、年々、町並みが当時の面影に近づいている。平成4年、町は「山村振興等農林漁業特別対策事業」を導入、農山漁村の生活体験ができる「体験学習館」「アトリエハウス」「海中公園遊歩道」を整備。平成8年からは、「千石船(五百石積み)復元プロジェクト」が開始。平成9年、佐渡弥彦米山国定公

園の矢島・経島に、おしゃれな漁業体験施設が完成。管理運営は矢島観光管理組合で、目玉は「たらい舟」。美しい海底を見てもらうため、新しい「海中透視たらい舟」をつくった。小型定置網も設置され、実際に網揚げ体験ができ、とった魚で調理。試食するコーナーも設けた。

? 養殖が盛んになったことや中国、韓国から安い輸入品が急増し、天然物の採取は採算が合わず、消滅寸前の状態になっている。町では5年から観光と第一次産業との連携を図り、相乗効果を上げる狙いから、町・漁協・農協などが中心になって、第三セクターの「(株)小木まちおこし公社」(資本金1,400万円)を設立し、特産品開発に乗り出している。これまで以上に海洋・海岸には、ビオトープ(多自然型)思想を明確にした環境保全手法が重要になる

 

 

 

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