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運営の特徴:

? 農協・森林組合・商工会などの半身内的経済団体の参加だけでは、都市農村交流事業のもつ積極性(都市部への事業展開の可能性の開拓)は難しいと考え、福岡市を軸にさまざまな企業や事業体に財団への参画を頼んで回った。

? 民間事業体の参加は財政支援のためではなく、財団『杣の里』事業の事業・業務支援のためである。福岡・西日本の両銀行からは財団事業の営業分析を、JR九州からは都市からのアクセス確保やPR業務の支援を、東急エージェンシーからはイベントなどのノウハウや人脈支援を、グリーンコープ生協からは交流客確保とPRを業務支援してもらうためであった。そのため、財団の内部組織も理事会と幹事会に分けている。形式的ではなく、実質的な事業検討ができるシステムを作っている。幹事会は、矢部村村内の活動的な若手リーダーと各企業の実務担当者および大学教員などで、財団運営の企画構想や経営分析などの実務検討を行い、その案を理事会が決裁していくという方式を採り、理事長は矢部村村長ではなく、JR九州の旅客本部長(当時)が就任し、村長は事務局長となった。

 

派生効果:

? 会員制による中核づくり

財団『杣の里」の事業展開は、会員制による交流客確保を軸として進めている。会員には個人会員(会費2万円/2年、164口)と法人会員(会費25万円/2年、20社)とに分かれている。また、会員の紹介客を交流客として一般客と区別している。平成6年度の「渓流公園・杣の里」の宿泊実績は4,691人であるが、その38.8%は法人会員、25.7%は個人会員、24.5%が交流客であり、全体の9割近くがこの会員制システムに関連している宿泊者となっている。

? 大胆な人材登用と斬新なアイディアの実践

矢部村は能力のある者を登用するという仕組を、財団運営の中から実践し、この形態は社会福祉法人「結の森」運営にも生かした。「渓流公園」内にあるレストラン「ザ.クレソン」は、本格的なフランス料理店(デイナー料金の最低は4,500円)で、定番メニューからの脱却、料理の質の高さ、ウェートレスの作法などが本格的であることなどによって安定的な営業を続けている。シェフ特製の「きのこ入りカレー」の他、ビーフカレー980円、チキンカレー780円の高級カレーではあるが、都市ビジネスマンや婦人客を中心に安定的な顧客がついた。また「杣人の家」という郷土料理店も経営している。

? 各事業の有機的連携の追求

福岡市内に出しているアンテナショップ「ソマリアン」は、企業人の常識を入れ、絶対に矢部村の特産品であるシイタケ・お茶の販売をしないという条件で出店。安定的な顧客がつくことでアンテナシヨップの経営はほぼ軌道に乗った。

1.八十八夜新茶販売フェア、2.毎月第1・第3水曜日の青空市、3.団地出前市

財団「杣の里」での雇用は常勤30名、パート10名、アルバイト約15名となっており、村役場に次ぐ雇用チャンスを生み出している。

? 「柚の里」の事業に文化的香りが漂っていること

教育長の椎窓猛氏が著名な詩人であることなど、その香わしい雰囲気が、「杣の里」の何よりもの魅力である。 『杣の里J事業は、平成4年に過疎地域活性化優良事例の国土庁長官賞、平成7年にふるさとづくり賞(内閣官房長官賞)を受賞した。

 

 

 

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