◇ 風景イベントの開催
● 美しい風景を発見する過程を写真コンクール、風景発見ツアーなどのレクリエーション活動として生み出し、本地域を訪れる人のみならず地域住民も参加可能な活動として展開していく。
● 御前山周辺では、動植物の宝庫であることを活用して、風景に加え、鳥、虫、花などの観賞及び写真コンクール、さらに音の風景として、小鳥のさえずり、虫の声、せせらぎの音の収集コンクールなどにも発展させ、県民の環境指向にも応えたユニークなレクリエーション活動の創出を図る。
《風景とレクリエーション活動の事例》
◇ 大分県湯布院町
「かげぼし・らこずみ農村景観」&「うまい湯布院米・牛の飼料確保」事業
稲わらのある田園風景観は、湯布院町農村型リゾートの基盤であるとして、収穫した水稲を掛け干しなどの自然乾燥により、水田において保全管理をおこなってもらう(わらこずみ)。さらに畜産農家は堆肥として水田所有農家に還元するシステム。財源として観光旅行組合の「観光基盤整備協力金」から援助があり、田園景観の保全を通して、観光と農業の共生を果たそうとする試み。
◇ 愛媛県内子町
満穂むら農村整備事業
水車小屋や茅葺き民家の復元、石垣の保存、河川の整備や広葉樹の植林などのほか、町が古い農家を移築再生した公営の宿泊施設「石畳の宿」をオープンし、都市生活者との交流を深めることを目的にして、地域内の女性が主体になり、郷土料理のもてなしでもってスタートした。この宿は、地域の農家屋敷を再現し、景観形成とくらしの体験が実現できる。背景には住民の自主的な組織である「石畳を思う会」の農村文化や景観を重視した地域づくり運動が展開されている。
◇ 広島県尾道市
絵のまち尾道四季展
尾道の四季を題材に油絵を描くイベント。芸大生や有名画家を招待し、著名審査員を依頼するなどの工夫で、全国からハイレベルな作品を集めている。賞金も高額。絵になる尾道といったイメージの普及、全作品展示による四季展のPR、観光客の増加などの効果をあげている。
(2) レクリエーション活動の展開イメージ-グリーンツーリズムの可能性―
本地域のレクリエーション活動の基本形態は、農山村的風景の中で展開される主として都市住民と地域との交流ということができるが、このような形態は、「グリーンツーリズム」として既に各地で取り組みが進んでいるものと同義のものである。
グリーンツーリズムは、「都市の人々が農山村の民宿やペンション等に宿泊滞在し、農村生活や農林業体験等を通じて地域の人々と交流を行ったり、あるいは、森・川・田園景観やふるさと的風景を楽しむなどの余暇活動のことをいう」(依光良三著「グリーン・ツーリズムの可能性」より)と定義され、第4章において整理したように本地域はグリーンツーリズムに適した資源や環境を有していると評価できる。しかしながら、農家民泊など滞在をサポートする部分での条件は整っていない。この面については、本地域のみならず手続きの煩雑さやハード面への投資などの障壁があり、実際に本調査研究におけるヒアリングにおいてもそのような部分で農家民泊を断念したという例もあった。
本調査研究においては、完全な農家民泊を伴ったグリーンツーリズムの形態を当初から想定するのではなく、既に地域内にありー定の実績をあげているキャンプ場や公営宿泊施設などとの連携を前提とした、地域内レクリエーション活動重視型のシステムの展開を当面の目標とする。
ア “水”のレクリエーション
ここでいう“水”のレクリエーションは、大河川から小河川、山間のせせらぎ、湧水に至るまで多様な様相を呈している城北地域の豊かな水系におけるレクリエーション活動を想定したものである。
本地域を代表する河川である那珂川では、釣り、カヌー、河原遊びなどのレクリエーション利用は多く、藤井川でも釣りや川遊びでの利用が見受けられる。しかし、これらのレクリエーション利用は、個別的でありまた自然発生的なものであるため、水系のレクリエーション活用という観点からみれば不十分かつまだ大きな可能性を残しているものといえる。
特に那珂川は、本地域内でのみ完結しているわけではなく、上流、下流に目を転じてみれば流域としてのレクリエーション活動空間としてスポーツ、レジャー種々の面からの活用が広がる。また、そのほかの河川においても利用のし易いスポットを掘り起こし、レクリエーション空間として活用できる余地がある。
一方、そのほかの活用形態として、御前山ダムのような新しい水域の創出に伴うレクリエーション活動や、改修された河川・水路の多自然的再生を前提とした新しいレクリエーション空間としての再利用なども想定される。