中国山地県境市町村連絡協議会(中国4県境の16市町村)
これまでに述べてきた主要な広域連携タイプのほかに、上記の4タイプの複合型が考えられる。これは当初の活動目的を達成するためには、段階的に解決すべき課題が横たわっており、一つひとつ解決していくことが当初に設定した課題の解決につながっていくことになる。
(5) 新しいかたちでの広域連携の必要性
自治体が遭遇しているさまざまな課題を解消するための体制として、これまでは大きく自治体単独による場合と広域市町村圏での場合とに限られていた。
しかし、今日、自治体が直面する課題は、住民ニーズの多様化にともない複雑化・高度化しており、以前に比べてそれらの深刻さも増しており、緊急性も高くなっている。また、交通体系の発達や自家用車の普及などにより、住民の活動範囲も以前に増して広域化している。さらに、通勤・通学圏も交通網の発達にともない、地元(中山間地)から地方の中核都市へと広がっており、この点でも広域化が進行しているといえる。
住民活動の広域化は、市町村同士の垣根を取り払い、情報が往来することを容易にし、これが住民ニーズを多様化させることにつながっている。
一例をあげれば、住民の環境問題に対する意識の高まりは、自分たちの住む空間や利用する機能などの身近な問題に向けられはじめている。つまり、自分たちを取り巻く自然を維持することが重要であることに気付き始めたのである。
しかし、自然環境の維持は、広域にわたることが多く、個人や単独の自治体で取り組むことは困難であるとともに、効果も少ないと思われる。
とくに、河川や湖沼の汚濁防止、森林の維持管理などは、特定の団体や個人で取り組んでもあまり効果的ではない。やはり、対象となる全域をカバーする自治体や民間団体、住民が一丸となって取り組むことが必要である。この例のように、一つの自治体では解決のできない課題が出現しており、広域的な連携による取り組みが必要とされている。
これまで述べたように、農村地域、とくに中山間地域を取り巻く環境は、深刻さを増しており、これまでの既存の体制では解消できない分野が現れており、広域市町村圏とは違ったタイプの新しい広域連携が望まれるようになる。すなわち、単独自治体や広域市町村圏などで取り組めない困難な課題については、より多くの人や団体の参加が見込め、お互いに有する資源の共有化や相互利用の可能な広域的な連携が必要となってくる。行政区域にとらわれることなく、多様なニーズに対応でき、多方面にわたって取り組めるフレキシブルな体制の下に、制約のないリベラルな発想で進展する連携が必要である。