さて、1月16日のHarry Caterさんたち3人の専門家が来日しました。Harryさんは、海鳥研究を専門とし、油汚染された海鳥を政府の側から調べてアセスメントをしたりしている人です。Roger Helmさんは、アメリカ西海岸の油流出事故対策の政府専門官です。Scott Newmanさんは、獣医で、海鳥治療を専門としています。彼らの来日はまったくの善意からなされたもので、それぞれの自分の得意分野で日本の海鳥のためになにかしたい、という気持ちで来られました。彼らの移動する場所はOBIC事務局に一任され、また、獣医師のScott Newmanさんは野生動物救護獣医師協会と行動をともにすることとなりました。
そして、1月17日よりHarryさんとRogerさんは、石川、福井、京都と回り、Scottさんは石川、新潟、山形、北海道などを点々とされました。
ここでも、いくつかの問題が出ています。それは、現場は現場で張りつめた空気があり、とても外部を受け入れる雰囲気ではなかったことと、彼らの来日が形式なものと見られたところがあったことなどです。
さて、私たちが海鳥のためにまずしなければならないことは、救急医療です。しかし、残念ながら、多くの鳥は救護されても死んでしまうことが少なくありません。というのも、救護された時点ですぐに弱っている鳥が多いことや、人間と接触することによるストレス、油による直接的な中毒などがあるためです。
油による海鳥の死亡は、海岸に漂着することではじめて人の目に触れます。しかしながら、海岸に漂着する鳥は、実際に死亡した鳥のごく一部にしか過ぎません。大部分は海流の関係で流れ着かなかったり、途中で沈んだり、また、漂着しても人に発見されなかったりします。Harryさんたちからそうして学んだのは、実数は、以上のような理由で漂着鳥の10倍から20倍にも及ぶ場合がある、ということでした。実数の推定には、コンピュータによるシミュレーションの方法が開発されているそうですが、これらの作業のためには、漂着した種、日時、場所などに加え、どのくらいの頻度で海岸を見回ったのか、などの情報も必要とされます。
タンカー事故などによる油の流出や不法投棄は、海洋環境に大きなダメージを与え、多くの海鳥を死に至らしめます。
(OHP)
まず、流出直後に油の付着による体温の低下、揮発性ガスによる直接的な中毒、油の摂取による直接的な中毒などを引き起こします。そしてその後、油の付着による体機能の低下、つまり飛翔力や潜水力などの低下により採食機能が低下して餓死したりすることや、食物連鎖起源による中毒、採食物や採食範囲の減少による餓死と繁殖成功率の低下、抱卵個体の油の付着による卵への影響、つまり卵が孵化しなかったり、孵化しても育たなかったりすることや、つがい相手の死亡による繁殖失敗、地域個体群の欠落による繁殖個体数の減少、そして最悪の場合、繁殖地としての崩壊などにつながります。つまり、直接的な死だけではないのです。
こうした事故がおきると、多くの人の目は、直接的な野鳥の救護ばかりに傾きます。しかし、日本野鳥の会の会報で北大の綿貫さんも言われているように、私たちは個体の死と同時に個体群の死、にも目を向けなければなりません。OBICでは、海岸でのセンサスを含めての資料の収集と、被害の記録、被害規模の推定をおもな目的とし、とくに事故後の個体群の回復に焦点を当てて、さまざまな活動を行ってきました。
その第一段階として、死亡した個体をすべて一ヵ所に集めてもらうよう環境庁に依頼し、一活管理とデータベース化をはかりました。
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今回の事故では、死体は基本的に各府県から冷凍で東京港野鳥公園に送られました。東京港野鳥公園では、各死体の油の付着状態を、大きく5段階