資料4.
日本海重油流出事故におけるOBICの海鳥調査(1997年9月21日、自由集会講演より)
※9月21日の自由集会の内容については、別途報告書を作成中であるものの、研究会と他NGOとのつながりや、被害推定における研究会の役割を示すため、重複して掲載する。
1997年9月21日 日本鳥学会新潟大会自由集会
日本海重油流出事故における
OBICの海鳥被害調査
日本ウミスズメ類研究会・北海道海鳥センター
小野宏治
まず、自分の話すタイトルの説明からしたいと思います。
OBICとは、Oiled Bird lniormation Committeeの略です。日本語では『油汚染海鳥被害委員会』というとても長い名称ですので、以後の話もOBICとします。
OBICの海鳥被害調査を話す前に、どのような経緯でOBICができたのかをお話しします。
(OHP)
日本ウミスズメ類研究会では、タンカー事故直後の1月6日、
1.被害の実状を記録し、
2.被害の規模を推定し、
3.被害から海鳥を守るための方策を検討することを目的に、油汚染海鳥被害委員会、oiled Bird lnformation Committee(OBIC)を設置しました。 それと同時に、 PACIFIC SEABIRD GROUP日本海鳥保護委員会を通じて、海外の海鳥研究者にいち早く事故の様子を伝えました。
PACIFIC SEABIRD GROUP日本海鳥保護委員会は、アメリカ最大規模の海鳥研究者の団体、PACIFIC SEABIRD GROUPのなかに作られた小委員会で、日本の海鳥保護に関心を持つ海外研究者を中心に構成されています。そのメンバーの一人、Harry Carterさんから、電子メールですぐに返事が届きました。
返事の内容をもとに「我々はなにをすべきか」をまとめ、会員に宛てて緊急に手紙を発送しました。
さて、我々の連絡を受けて、Harry Caterさんはいち早く体制を組んでくれました。それは、海鳥研究のスペシャリスト、Harry Caterさんをはじめ、3人の専門家が緊急に来日する、というものです。
当初、研究会とPSG日本海鳥保護委員会でできる範囲でやろう、と動いたわけですが、その後、大きく方向転換する必要性が生じてきました。
OBICの目的を遂行するためには、関係各機関の連携が不可欠です。日本では、漁業活動のために沿岸部に住む人々も多く、今回のような事故の場合、漁業資源や海岸そのものの汚染に大きな注目が集まりますが、一方で鳥の被害については比較的軽視されがちでした。
我々はWWF-Japanや(財)日本自然保護協会など関係各機関に連絡するとともに、まず日本野鳥の会に話を持っていきました。日本野鳥の会は全国に支部を有しており、このような事故の場合、最も早くネットワークが構築できる組織です。それまでごく小規模にOBICが動いていたわけですが、OBiCにはWWF-Japanをはじめ、(財)日本鳥類保護連盟、(財)山階鳥類研究所などがくわわり、事務局を(財)日本野鳥の会に移して、より大きな形で動くこととなりました。
なお、当初描いていたOBICのイメージは、この図のようなものでした。
(OHP)
これは、団体への呼びかけの時に作成したものです。OBICを創設した際、「団体の枠を超えて官民が一つの目的のために結集する」ということもめざしたわけです。緊急を要する場合でも、団体や個人ごとの利害関係や確執が出てしまい、連携がとれない場合が多く見られます。連絡組織としてのOBICを意識しながら活動するようにつとめたわけですが、急ごしらえの組織であるが故に、うまくこちらの意図が伝わらなかった面もたくさんありました。また、OBICは連絡組織である一方、たんに情報を流すだけでなくて、各構成組織が、OBICの一員として自分たちのできることを考えながら動いていくようにもしました。