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よび福井県で、渡り途中の多くの幼鳥が落鳥し保護されることがある。これらの個体の大半は、各府県の鳥獣保護の担当機関を経て、若狭湾や和歌山県等の大平洋岸で放鳥されている。この点では、京都府や京都市動物園をはじめとする諸機関は、オオミズナギドリの幼鳥の保護の扱いについては、かなりの経験があると言える。また、その関係者も多い。

 今までも保護された個体が、標識して放鳥され、パプアニューギニアで生きて再保護された(また放鳥された)といった例もあった。

 

・標識調査

 冠島に渡来するオオミズナギドリの個体群の諸特性を把握するために、継続的な標識調査が行われている(吉田,1981)。標識再捕法により0.6haの調査区間にかかわるオオミズナギドリの個体数は約12000羽であると推定された(須川・成田他,1983)。しかし、0.6haにかかわる個体が、どの程度の範囲を島の中で動くかの調査が完了しておらず、冠島全体にかかわるオオミズナギドリの個体数推定までには至っていない。とりあえず、報道などに流している10万〜20万羽という数は、けっして誇張ではないとだけ、ここでは言っておく。

 

・冠島オオミズナギドリの保護状況

 冠島は、オオミズナギドリの繁殖地として1924年に天然記念物に指定され、舞鶴市がその管理を行っている。現在、学術調査や村の祭りなど特別な目的を持たない限り島内ヘの立ち入りは許可されず、許可を受けていない釣り人などが海岸に上陸することはあっても、営巣地内に立ち入る人はほとんどいない。

 漁師は、かつては海上にいるオオミズナギドリの群れによって魚群を知り、また冠島は魚付き林や信仰の島として扱われてきた。冠島周辺の海岸そのものは、サザエやアワビを箱メガネで採り(海女を入れない形に資源管理されている)、また定置網設置の場ともなっており、三浜・小橋・野原の3村によって保護されてきた。

 オオミズナギドリそのものは、木に登るなどの変わった習性を持つ海鳥として、あるいは「京都府の鳥」として、さまざまなメディアで紹介されており、オオミズナギドリヘの社会的な関心は高い。このように、オオミズナギドリの繁殖地としての冠鳥の保護は、社会的な理解のもとに、行政的にも巌重に行われており、特に保護上の問題もなかった。

 したがって、今回の重油流出は、冠島のオオミズナギドリにとって、最大級の保護上の問題だと言っても過言ではない。

 

・沓島に関して

 なお、冠島の近くにある沓島は、数千番のウミネコの営巣地となっている。また、この島は、少数のオオミズナギドリ、ヒメクロウミツバメ、カンムリウミスズメ(国の天然記念物に種指定されている)の営巣地にもなっている。沓島は冠鳥と違って、尾根部の一部が木立で覆われていることを除くと一面に裸地または草地である。

 

文献

須川恒,1993 魚食性水鳥(ウやミズナギドリなど)の生態と現況. 関西自然保護機構会報:14(2):65-72

須川恒・百瀬浩 1983 冠島の鳥類。冠島動・植物調査報告書:12-21 関西総合環境センタ.

 

 

 

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