は、木立をうまくよけて飛び立つことができない。そのために、海に向かって開かれた岩場や崖から、あるいは海にむかって開かれた場所を求めて木に登って飛び立つ。その直後、採食地に向かう前に、島近くの海面にいったん着水する大きな群れが見られる(「脚洗い」と呼ばれている現象)。
つまり、オオミズナギドリは、島への出入りの際は、冠島のまわりの磯はあまり関係がないが、出入りの際に、付近の海上に大群で着水する。これが今後、漂流する重油との関連で重要なポイントとなる。
・採食範囲
冠島のオオミズナギドリは、毎日帰島数が異なっており、数日をかけて海上で採食している個体が多いものと考えられる。冠島のオオミズナギドリに標識した個体が繁殖期に回収される範囲は、日本海全域にわたっているが、特に島根県〜石川県あたりの回収例が多い(この点の整理が今後必要)。今、仮に冠島から半径200kmの円を書くと、ほぼ中心的な採食圏に関してのイメージを得ることができるのではないだろうか。これは、まさに今回の重油漂流の主要な範囲と重なってしまう。
・渡来時期
オオミズナギドリは、2月下旬に南方海域から冠島周辺海域に渡来する。1990年1月末に丹後半島で座礁したマリタイム・ガーディニア号から大量の重油が流れだし、オオミズナギドリヘの影響が憂慮されたが、オオミズナギドリが渡来する時期までに重油の流出が食い止められ大事には到らなかった。また、1986年の島根県沖の重油流出のさいも、ウトウなど数千羽の被害をだしたものの、オオミズナギドリが渡来するまでに、重油流出は収まっていた。このように、重油とのからみでは、ここ10年程の間に、オオミズナギドリは2回も助かったのであるが今回は、2000メートル以下に本体のタンカーが沈んでおり、当初流出は無いとの予想もあったが、現実には流出が続いている。
・営巣過程
巣穴は前年から開口したままのものが多く、渡来したオオミズナギドリは、これらを補修し、あるいは巣穴が消失した場合はあらたに掘る。嘴で掘った上を、脚によって開口部から数mの範囲に蹴り出す。巣穴の補修や新たな掘削は在島期間を通して見られる。
交尾期は5月下旬から6月上旬にかけてであり、交尾期間後産卵期までの間にほとんどのオオミズナギドリが帰島しなくなる日がある。この時期は他のミズナギドリ類で新婚旅行期と呼ばれている時期で、産卵とその後の抱卵のためのエネルギー獲得の時期と考えられている。産卵期は6月中旬で、雌は約75gの鶏卵大の卵をただ1卵産み、雄が抱卵を開始する。抱卵期間は約53日で、その間およそ1週間交替で雌雄が抱卵する。孵化期は8月上・中旬であり、両親は魚の半消化物を給餌する。育雛期間は約80日間で、雛が巣立つのは10月下旬以降になるが、両親が盛んに餌を運んでくるのは10月上旬までで、成鳥は先に渡りを開始するようである。この時期に雛は既に親の約1.5倍の体重になり、その後体重を減少しつつ正羽へと換羽が進む。
・迷行落下
10月下旬から11月にかけて巣立った幼鳥は次々と離島するが、この時期に近畿地方お