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きた。何の声だろうと思い、埋め立て地の縁まで行ったところ、約20m離れた目の前の海上にムクドリくらい(ハトより小さく、スズメより大きい)鳥が一羽泳いでいた。嘴の先から尾にいたる上面は灰色がかった黒色で、目の後ろにぼんやりと白い部分が認められた。肩には小さいながらもはっきりとした細長い白色部があり、下面もきれいな白色であった。嘴は細く長かつた。以上の特徴から、この鳥はマダラウミスズメの冬羽であると判定した。

 この鳥は、さかんに目の前の海上で潜水をしていた。晴れて風がない穏やかな日であったために、海面にほとんど波はなく、双眼鏡でも水中を羽ばたいて進んでいく様子をはっきりと観察することができた。潜水が終わって、水面にでてくると次の潜水までのあいだに時折、「クィッ、クィッ」という最初に聞いた声を出していた。この声は、現在インターネットのホームページ(http://www.muratasystem.or.jp/〜kukuma/shretoko/)で流れている、「ピュー、ピュー」という太平洋東側に生息する基亜種(Brachyramphus marmoratus marmoratus)の声(繁殖地でのもの)とは、明らかに異なっていた。どちらかというと、カンムリウミスズメが海上で出すという「ピュイッ、ないしチェイッ」という声(小野 私信)に似ていると思われる。

 発見してからしばらくのあいだ、この鳥は目の前の海上で潜水を繰り返していたが、やがて護岸された岸に沿って泳ぎ去っていった。この間の時間はおおよそ10〜15分であった。この後、たまたま近くにいた一人のバードウォッチャーにマダラウミスズメのことを告げたが、この人は鳥を発見できなかったとのことだった。

 

小野宏治.1996.マダラウミスズメ調査についてのQ&A.日本ウミスズメ研究会会報,12:1‐3.

 

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 1997年1月3日、島根県隠岐諸島北東沖約100km地点でおこった「ナホトカ号」の重油流出事故は、海鳥とそれを支える生態系に、現に大きな被害を及ぼしている。京都府舞鶴市の冠鳥で集団営巣するオオミズナギドリに関しても、報道関係の問い合わせ等も多いため、重油問題に冠島のオオミズナギドリがどうかかわる可能性があるのかを、須川(1993)をもとに、急還まとめた。冠鳥のオオミズナギドリのおかれた状況の理解に活用していただきたい。(1997年1月26日)

 

オオミズナギドリの生活史

 オオミズナギドリはミズナギドリ目に属する鳥で、アホウドリやウミツバメの仲間である。この類の鳥類は、管鼻と呼ばれる管状の鼻を持ち、その奥に血液中の塩分濃度を調節できる塩腺があるため、淡水無しで外洋で生活できる。

 オオミズナギドリは、日本、朝鮮半島、ロシア共和国極東部の近海にある離島で集団営

 

 

 

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