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 油にまみれた死体の識別は難しく、とくに危急種に指定され世界的にもっとも絶滅の恐れのあるカンムリウミスズメと、ウミスズメの識別、また、国内絶滅危倶種に指定されているウミガラスとハシブトウミガラスの識別など、専門家の手により詳しく調べる必要のある種も含まれます。

 したがって、これらの種の識別と被害規模の推定のため、死体の保存と集積を関係各機関にお願いいたします。これらの死体の受け入れ体制については、油汚染海鳥被害委員会(OBIC)事務局(電話03-3463-8997、FAX 03-3463-8844)が緊急に準備しており、あらためてお知らせいたします。

 

3 今後の活動

 研究会は、現OBICの母体を作るとともに、現OBICのなかでメンバーの一員として動いています。これまでに、アメリカからの研究者3人の招聘(費用は将来的にOBICで負担される予定ですが、現在のところ研究会が出しています。また、実際の招聘にあたっては、PSG日本海鳥保護委員会のつながりで連絡しました。)と案内、識別者の派遣(沼津の原徹さん)を行っています。また、関係各方面に出される文書や、調査のための推奨フォーマットの作成、調査マニュアルの一部についても研究会が発信しています。

 今後、死体は大井野鳥公園に集積される予定で、計測と標本整理のためのボランティアを募集しています。FAX、手紙、またはメールにて、

〒136 江東区亀2-6-4-214 小野宏治 Tel&Fax 03-3685-6463

kojiono@gol.com, HCB00437@niftyserve.or.jp

までお願いします。

 死体の回収については、なかなか理解しにくい部分だと思います。死体を集積することの意義は、つぎのとおりです。

1.種の確定

 油にまみれた死体の識別は難しく、とくに危急種に指定され世界的にもっとも絶減の恐れのあるカンムリウミスズメと、ウミスズメの識別、また、国内絶滅危倶種に指定されているウミガラスとハシブトウミガラスの識別など、専門家の手により詳しく調べる必要のある種も含まれます。とくに、カンムリウミスズメについては、これまで図鑑で示された羽衣とは異なり、冬羽がウミスズメと酪似している可能性のあることが示唆されています(小野・河野、未発表)。

 計測は、計測者による誤差を最小にするため、原則として一人で行うべきです。わずか数mmの違いが、種の違いにつながるからです。

2.年齢の推定

 生殖線の大きさと計測値とを合わせることにより、種によってはおおよその年齢が特定できます。これは、今回の油流出事故が、地域個体群にどのくらいの影響を与えたのかを調べる上で、とても重要です。

 海鳥は、ふつう“少産少死”でぁるため、このような事故がひとたび起きると、なかなか個体群は回復しません。きちんと被害を推定することで、その後の環境再生につなげていく必要があるのです。

3.生理学的研究

 その個体がなぜ死んだのか、また、環境にどう影響を与えたのかを知るため、死体の組織学的、生理学的研究も必要です。

 これらのことは、いずれも被害の規模を正しく記録し、推定し、そしてその後何十

 

 

 

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