7.鳥学上の今後の課題
・海鳥繁殖地のモニタリングと、目録の作成
日本ウミスズメ類研究会では、(財)日本自然保護協会のP.N.ファンド助成を受けて、1994年から1995年の2年間にわたって、カンムリウミスズメを中心とするウミスズメ類の繁殖地モニタリング、および目録作りをしてきた。繁殖地の多くは無人島で、メンバーが分担しながら直接踏査した。しかし、調査には大きな危険が伴うため、より長い期間、もっと費用をかけてきちんと調べる必要がある。
・海上のモニタリング
定期航路で見られる海鳥の情報を一括管理・共有化し、いま、どこでどんな海鳥が見られるのか、また、その海域にはどう出現するのか、などを押さえておくべきである。ナホトカ号の事故では、事故海域にどんな海鳥がいるのか十分に調べられていなかったため、被害鳥の推測ができなかった。
・全国の海岸海鳥漂着調査(Beached Bird Survey)
海鳥は、油汚染の時だけでなく、平時にも海岸に漂着している。油汚染の被害鳥数を精度よくシミュレーションするには、事故のない時の漂着率も知っておかなければならない。研究会では1997年現在、北海道4地点と石川県1地点をモニタリングしているが、より広い範囲での調査が求められる。
・調査者の養成と基金作り
海鳥の調査にはたいてい大きな危険が伴う。そのため、さまざまな面で調査経験者よりアドバイスを受けたほうがよい。経験者を中心とした少人数制の調査経験プログラムを組み、調査者の裾野を広げていくことも必要である。
また、島の調査には、漁船のチャーター代など、かなりの費用がかかる。活動費用の面でも調査者を支えるべきである。研究会では「海鳥研究・保護基金」を1997年に設立したが、残念ながら基金運用するには至っていない。