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的情報だけでも良いならば、画像の縞棲様のパターンを2次元フーリエ解析することによって、波浪の「方向スペクトル」を求めることは可能である。

5.SARの波浪データの応用

 海洋分野では、水産や気象などの一部を除いて、衛星搭載センサーの観測データの利用は充分進んでいるとはいえないのが現状である。確かに、研究開発の段階では、様々の海洋現象の検出に成功し、海域のいろいろな事象に関する情報の把握が可能であるとされてきた。その結果は一部のオペレイショナル・レベルでも利用されてはいるが、多くの場合、スポット的、補助的な使われ方が多いのではないか。
 その理由はこの小論の最初で述べた、リモートセンシング技術の「限界」に加えて、データの安定的、継続的、即応的な供給が保証されていないこと、コストがかかることなどであろう。
 SARにおいては、この傾向はさらに強い。SEASAT以来、スペースシャトルのミッションはあったものの、ERS−1やJERS−1のSARの運用開始まで、15年にも及ぶ空白期間があったことが実用化のためのアルゴリズムの開発を遅らせてしまったといえる。
 しかし、SARの能動型全天候センサーの特徴は従来の光学センサーのもつ、天候や夜間による欠測というデータ供給面での欠陥を取り除くものであるし、また、当初、SARの最大の難点であった複雑なデータ処理の問題もその後のコンピュータ技術の大幅な進歩によって大きな障害ではなくなった。さらにデータの即応的な供給も、ブラウスデータについてはインターネットが活用されるようになってきた。
 SARの海面画像には、人間の視覚では体験できない様々なバターンが浮き出すことはすでに述べた。その実体がなにであるかを検証することは、「海」であるが故に非常に達しい。「流れ」の場の画像などにはこのような未解決の問題が絡んで来ることは大いにあり得る。
 一方、「波浪」や「海氷」のようにこのような問題からは一応切り離して、SAR画像からその情報を抽出できそうな観測対象もある。いま、SARデータの海洋への利用を積極的に進めようとする立場に立ってみると、まずこれらの観

 

 

 

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