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測対象に困して、SARデータはどんな情報を与えることが出来るか、を考察してみることが必要であろう。ここでは「波浪」についてそのヒントとなるような例を1,2挙げてみたい。
 Spot的な画面から得られる波浪のパターンは、待定の海域の、ある瞬間の波浪情報を、かなり的確に与えてくれるであろう。この前提に立った上で、

(1)SARは10数日乃至数十日の一定の間隔で継続的に、ある待定の海域の観測データを供給することができる。

(2)SARは10−20mの地上分解能を有するとする。

(3)データの即応的供給は必ずしも必要ではない。

(4)沿岸海域ではSARの観測時に波浪の検証観測が行える。

という、かなり現実的な条件を与えたとすると、いますぐにも次のような応用が可能である。

a.波候資科の作成

ある特定の沿岸海域についての数年にわたり統計的に有意な量のSARの観測データを収集して波浪パターンを抽出し、2次元フーリエ解析を行って、各季節ごとの波浪の方向スペクトルに相当する情報を得る。
 これはその沿岸海域においての、季節或いは月ごとの波浪の方向別のスペクトルを統計的に示すもので、海岸の保全や港湾の設計・管理に必要な「波候資科」になる。従来、このような統計資科を観測から得ることは多額のコストを要する作業であった。

b.沿岸海の水深測量

表面波は、水深が波長の25分の1より浅い所では、長波の性質を持ち、位相速度は水深の平方根に比例すると、充分な精度で近似できる。ある特定の沿岸海域の、多くのSARの観測データから海岸に打ち寄せる波浪のパターンを抽出し、それらが海底地形に応じて屈折する様子から水深の変化を推算する事が出来るはずである。こための計算モデルの開発が必要である。
 沿岸海域の海底地形は開発・環境保全の両面から求められる重要な情報であるが浅海では測量が難しいのと、唯積物等によって海底地形が頻繁に変化することを考えると、SARデータの利用は有効であろう。

以上の応用例については、今回の調査とは別に、是非、機会を改めて本格的な検討を行って見たいところである。

以上

 

 

 

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