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4.SARと波浪の関係

 通常、外洋の波浪(風波とうわり)は周期20秒以下、波長600m以下であり、人間の活動に必要な波浪情報としてはこの内、周期3秒以上、波長15m以上のものが対象になると考えられる。この範囲は概ね現在のSARの分解能でカバーできるものである。問題は海面の散乱強度のレベルが低いことで、オフナディア角を40以上にとると波浪の検出は難しい。
 SEASATのSARの海面画像を拡大してみると波浪と思われる規則的な濃淡の縞模様が現れる。このパターンが波浪を表しており、縞の間隔が波長に対応することは、航空機SAR検証済みである。
 明るい稿が波浪の峰線か谷線あるいは前面か背面のいずれに相当するのかは分からないが、それらに平行していて、1対1に対応していることは間違いない。おそらくこれらの大きな波の波面にそって、その上に乗っている、マイクロ波の散乱体である「さざ波」の分布状態が変化しているためで、そのメカニズムとしては次の四つ効果が考えられる。

 1.波動に伴う流体力学的相互作用により波の前面でさざ波の振幅が増大し(しわ寄せ)、背面で減少する(しわ伸ばし)。

 2.波面の傾斜によってさざ波に対するレーダ波の入射角が変化する。

 3.波動に伴う水分子の軌道運動によって、波面に沿ってのさざ波の伝播速度が変化する事によるドップラー効果。

 4.波面勾配によるレーダ波のlay−over現象。

 それぞれの効果について定量的には説明されてはいないが、いずれも波浪(大きな波)の振幅(波高)と波長に依存して現れる効果である。このうち波長の情報はSAR画像上の縞の「間隔」に反映されているが、縞の「濃淡」と、それを生じているはずの波高との定量的関係は分かっていない。波高については定性

 

 

 

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