3.SARと海洋の表層流の関係
SARの原理は、斜めに地表面を見下ろすレーダ・アンテナが、一定の高度を、一定の速度で直線的に運動するとき、アンテナから発射されたビームが地上に楕円形のフットプリントをつくるが、その中の各点から戻ってきた散乱波は、その点の散乱強度と、距離の差(レンジ方向)によって生じる位相差および相対速度の違い(アジマス方向)によって発生するドップラー効果による周波数の差などの信号で変調されている。受信された信号を解析すれぼどの点から反射されてきた信号であるかを同定することができる。これから逆に画像を合成したのがSARの画像である(図2)。
この場合、もし地上の散乱体がレンジ方向に運動していると、そこから戻ってきた信号は、ドップラー効果により見かけ上、アジマス方向の位置のずれとなって画像上に現れる。図3は航空機SARで測定したメキシコ湾流域の海面からの反射信号のアジマス方向の強度分布を表したものであるが、ビームの中心軸方向に現れるべき最大値ガレンジ方向の流れによってドップラー・シフトされ、アジマス方向への変位としてデータ処理されたためにずれた位置に現れている。
SEASAT衛星が観測したメキシコ湾流域のSAR画像に、細い筋が集まった縞模様が見られる(図4)。この場所は強い流れが大陸棚斜面にぷつかるところであるが、海面の物理的特性の違いに基づく散乱のムラなのか、海水の運動に伴うドップラー効果で生じたものなのか、80年代にはまだ説明されていない。